研究課題/領域番号 |
24651161
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山本 貴富喜 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20322688)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノ流体システム / 超高感度測定 / 1分子 / 電気二重層 |
研究概要 |
本年度はデバイスの作製と測定系の構築を行った。 ナノ流路中にナノギャップ電極を組み込んだ評価用のナノ流体デバイスを構成し,ナノ電極間に超微少電流計を接続した測定系を組み上げた。ナノ流体デバイスの作製に当たっては,H20~H22年度の基盤研究(C)で申請者が開発したナノ流路+ナノギャップ電極を元に作製した。本研究ではナノ加工に高度な半導体微細加工装置が必要となるため,申請者の現有装置だけでなく,かわさき新産業創造センター(KBIC)内の東大・東工大・早稲田大・慶応大の4大学で共同運営する最新のMEMS微細加工装置群を利用した。超微少電流計測に関しては,申請者現有の市販の電流計だけでなく,自作のオンチップ型電流計の設計と開発も進め,オンチップ化によるノイズの低減効果により,市販の装置と遜色無い高感度測定が可能であることを実証した。さらに,作製したデバイスによって,ナノ流路内に生じる電気二重層のイオン濃度依存性に関する測定にも成功した。熱ゆらぎによる増幅効果を得るに当たって,予備的に拡散係数の異なる溶媒,すなわち,水,イソプロピルアルコール,アセトニトリルなど,いくつかの溶媒を用いて電気二重層の広がりを測定した。溶媒だけでなく,溶質の違いに関しても検討し,1価のカチオンとしてリチウム,カリウム,ナトリウムイオンを,2価のカチオンとして,マグネシウムやカルシウム,さらに3価のイオンとしてアルミニウムイオン を用いた電気インピーダンス測定を行い,イオンの価数,および,イオン半径や水和半径が電界中の移動度に与える影響を計測し,実測した電気二重層の広がりが,従来の電気二重層理論と良く一致することを実証した。ただし,電気容量に関しては,理論式との解離が大きいため,その詳細な検証は次年度に持ち越すこととなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H24年度は測定デバイス(ナノ流路+ナノ電極)の作製法の確立を目標としていた。 実際は,測定デバイスだけでなく,オンチップ型の測定回路の試作と評価まで進み,かつ次年度に予定していたナノ流路特有の電気二重層構造の測定にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでいる。H25年度の研究で,熱ゆらぎによる電流変化の測定が実証されれば,当初計画の目標が達成される。 具体的には,デバイス下部にヒーターを設置して電流変化の温度依存性を測定する。電流変化が少なく,十分な変化が無かった場合の対応として,電解液溶媒を水より低粘度のアセトニトリルに交換して評価する。アセトニトリルでは水に対して3倍近い拡散係数が得られるため,電流増加が期待できる。従って,最終的には温度依存性と共に,粘度依存性の測定も進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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