研究課題/領域番号 |
24651164
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮武 秀行 独立行政法人理化学研究所, バイオ解析チーム, 専任研究員 (50291935)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | タンパク質結晶化 / X線結晶構造解析 / タンパク質分子分散制御 / ナノ会合制御 |
研究概要 |
タンパク質のX線結晶構造解析は、生命科学研究や創薬研究に重要な役割を果たしている。しかしその際には、目的タンパク質の結晶化が最大の難関となってきた。従来の試行錯誤的な結晶化方法(蒸気拡散法、バッチ法など)では、膨大な結晶化条件を検索しても、本質的に結晶化の成功率は数%ほどしかないため、X線結晶構造解析による構造研究のほとんどは結晶化の段階で頓挫してしまっているのが現状である。 そこで本研究課題においては、溶液中でのタンパク質分子の会合状態を、結晶化に関わるパラメーターを変化させつつリアルタイムでモニターし、結晶化に最適な状態に誘導することにより、合理的に単結晶を調製する方法の確立を目指している。 平成24年度は、結晶化装置プロトタイプを完成させ、主に試験タンパク質としてリゾチウムを用いて、様々な条件下で結晶化実験を行った。 その結果、沈殿剤を急速に溶液サーキット中に注入した直後に、リゾチウムの初期結晶核が生成した。その後、リゾチウム分子の単分散を維持しながら、リゾチウム、沈殿剤濃度とも同時に上昇させた場合に、良質な単結晶が生成することが観察された。この結晶をSPring-8で回折測定したところ、1Å程度の原子分解能の回折点が得られることが分かった。これは、従来知られているリゾチウム結晶の分解能のうち、上位一方、溶液サーキット中に、沈殿剤を緩和に注入した場合には、リゾチウムの初期結晶核は生成せず、その後、タンパク質、沈殿剤濃度を上昇させても結晶は生成しなかった。 これらの結果は、タンパク質結晶を合理的に調製する際に、タンパク質分子をナノレベルで会合制御することが、高品質結晶化に有効であることを示唆しており、原著論文として発表することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
結晶化装置プロトタイプを用いて、モデル試料であるリゾチウムの結晶化過程を、合理的に制御できることを示せた。係る内容について、原著論文も発表することができた。 しかし、H24年度において、結晶化装置プロトタイプの完成が当初の予定より遅れたために、リゾチウム以外での実験については未達となっている。
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今後の研究の推進方策 |
リゾチウム以外の試験タンパク質(グルコースイソメラーゼ、トリプシン、サウマチン、等)を用いて、より一般的な結晶化制御法方法を検討する。更に、新規タンパク質について、結晶化装置プロトタイプを用いて結晶化を試みる。 更に、装置の溶液サーキットを小容量化できれば、新規タンパク質を使用した実験も行いやすくなるので、今年度は装置全体の小容量化を推進する。 また、外国の専門家との情報交換を行うために、国内だけでなく、国外での学会発表なども積極的に行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、結晶化装置のプロトタイプの製作に当初の予定よりも時間がかかり、完成が遅れたために、予算の未執行が発生した。今年度は、H24年度に予定していた、試験タンパク質についての結晶化実験を進める。また、実験をより効率的に進めるために、結晶化装置の以下の改良も行う。 結晶化装置を小容量化するために、溶液サーキットをチップ化する。チップ中のタンパク質溶液の分散状態を非接触的に測定するために、現在の動的光散乱測定装置を改造または新規装置に置き換える。 そのために、H25年度は、前年度繰越金も使用して、小容量チップ、新型動的光散乱装置の開発のために、250万円程度の研究費使用を予定している。 学会発表費等については、50万円程度の予算使用を予定している。 その他、20万円程度を、論文発表費用とする。
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