研究概要 |
タンパク質をはじめとする生体高分子の立体構造を解析することは、生命科学研究や創薬研究において重要な役割を果たしている。その解析には主にX線結晶構造解析の手法が用いられるが、現在でも良質な単結晶を調製することが最大の難関である。従来法では、結晶化に関係すパラメータを組み合わせ、膨大な条件を絨毯爆撃的に検索することにより結晶化条件を検索するが、平均的な成功確率が数%程度しかないため、構造解析の試みはほとんどこの段階で挫折してしまうのが現状である。そこで申請者は、タンパク質分子の溶液中での挙動を直接制御し、合理的な過程により目的結晶を調製する手法の確立に取り組んできた。 まず、タンパク質分子の会合状態をモニターしつつ、溶液組成を変化させることが可能な結晶化装置試作機を製作した。この装置により、試験タンパク質としてリゾチウムおよびグルコースイソメラーゼを用いて、結晶化実験を行った。その結果、タンパク質分子が単分散状態に維持されるように結晶化過程を制御した際に、良質な単結晶が得られた。一方、結晶化の初期段階で多分散状態であっても、適切な制御により分散状態を単分散に回復させ、結晶を調製可能である事も見出した。これらの結果については、学術論文として出版することができた(Miyiatake, et. al. Crystal Growth & Design, 12, 4466-4472 (2012)). 今後は、現在の結晶化装置試作機を改良し、より少量のタンパク質で結晶化実験を可能にする予定である。
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