研究課題/領域番号 |
24651167
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯野 亮太 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70403003)
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研究分担者 |
内橋 貴之 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (30326300)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ナノマシン / 分子モーター / 1分子観察・操作 |
研究概要 |
F1モーターの固定子と回転子の相互作用に重要とされている固定子α3β3リングの入り口(DELSEED領域)やリング内部のアミノ酸配列を遺伝子操作で改変し、表面電荷の正負や親水・疎水性を大幅に変えた変異体を多種作製した。また回転子として、長さや配列の異なる様々な二重鎖DNAを合成した。 回転子DNA-F1α3β3固定子リングの複合体形成能を有するもの(以下ではDNA-F1とよぶ)を、精製後のSDS-ポリアクリルアミド電気泳動、紫外-可視吸収スペクトル測定、高速AFMによる1分子観察で確認した。DNA-F1ハイブリッドモーターは野生型F1モーターに比べ固定子と回転子の相互作用が弱かったため、回転子DNAの末端と固定子α3β3リングの内側を共有単結合でつなぐことで安定なDNA-F1複合体の作製に成功した。 得られたDNA-F1複合体がATP加水分解活性を保持していることをATP再生系を用いた多分子計測で確認した。また金ナノロッドをプローブとする1分子回転観察を行い、野生型のF1モーターと同様、120°離れた3か所で安定な停止点示すことを明らかにした。3か所で停止する時間はATP濃度を上げると短くなり、ATP加水分解反応と共役していることが示唆された。さらに、回転方向は60-70%の割合で反時計回りに偏っていた。しかしながら現時点では、連続的に一方向に回転するDNA-F1複合体は得られていない。これは、本来の回転子であるγサブユニットが非対称な構造を有しているのに対し、DNAは対称な二重らせん構造を有しているためと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、当該年度で一方向に連続的に回転するハイブリッドモーターの創製を達成する予定であった。現状ではDNAを回転子とするDNA-F1ハイブリッドモーターは得られているが、一方向性回転の効率は60-70%程度である。また、DNAだけでなくカーボンナノチューブ、金属錯体ナノワイヤ、人工らせんポリマー、フォルダマー等の人工分子も回転子として試す予定であったが、材料の入手に時間がかかりそこまで至らなかったため、(3)やや遅れている、とした。
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今後の研究の推進方策 |
さらに多種多様なα3β3固定子リング変異体、および様々な配列やミスマッチを持つ二重鎖DNAやRNAを合成して次々に試し、一方向に連続的に回転するハイブリッドモーターを創製する。 また、カーボンナノチューブ、金属錯体ナノワイヤ、人工らせんポリマー、フォルダマー等の様々な人工分子とα3β3固定子リングの複合体形成を試みる。高速AFMによる1分子観察で複合体形成を、ATP再生系を用いた多分子計測でATP加水分解活性の保持を確認した後、金ナノロッドを用いた1分子回転観察で一方向性の回転運動を実証する。 さらに、得られたハイブリッドモーターを1分子操作し性能評価を行う。磁気ビーズを可視化プローブとして磁気ピンセットで強制的に逆回転させた際にATPが合成できるかを検証する。フェムトリッターチャンバーやフェムトリッタードロップレット内で強制逆回転させることにより、ハイブリッドモーター1分子のATP合成効率を定量化してエネルギー変換の可逆性を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
人工回転子として用いるカーボンナノチューブ、金属錯体ナノワイヤ、人工らせんポリマー、フォルダマー等の入手に当初の予定より時間がかかったため当該研究費が生じた。今後、これらの人工分子の入手、改変、修飾の経費に利用する。
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