研究課題
回転分子モーターF1-ATPaseの固定子α3β3リングの触媒サブユニットβは、回転子γサブユニットがなくても一方向に順番を守ってATP加水分解反応と構造変化を行うことが先行研究で明らかとなった。そこで本研究では、回転子γの代わりに異種分子であるカーボンナノチューブやDNAを差し込んだハイブリッドモーターを創製することを目的とした。カーボンナノチューブとの複合化については、透析法等の種々の方法を試したが、残念ながらF1の固定子リングとの複合体は得られなかった。カーボンナノチューブを水溶液中で分散させるために添加されている界面活性剤の影響で固定子リングが解離してしまうためと考えられた。DNAとの複合化については、F1の固定子リングのγと相互作用する部位に正電荷を持つアミノ酸残基を多数導入した変異体を多種作製し、DNAの導入効率を紫外可視吸収スペクトルおよび高速AFM観察により評価した。さらに生化学アッセイにより、DNA導入F1のATP加水分解活性を測定した。これらにより、DNA導入効率が高くかつ活性を保持しているDNA-F1をスクリーニングした。次に、得られたDNA-F1のDNA部位に金ナノロッドを結合させ1分子回転観察を行った。金ナノロッドを用いたのは、DNAが傾いているだけなのか、真に回転しているのかを区別するためである。その結果、ATP依存的に一方向に大きくバイアスがかかった回転運動を観察することが出来た。しかしながら、1.120°のバックステップが頻繁にみられる、2.回転発見頻度が非常に低い、といった問題があり、論文出版には至っていない。さらにハイブリッドモーター形成の新しい材料として腸球菌由来V1-ATPaseの回転観察実験系を構築し、回転運動の基本特性を明らかにすることに成功した(Minagawa et al JBC 2013)。
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http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/utokyo-research/research-news/rotary-dynamics-of-molecular-motor-v1/