研究課題/領域番号 |
24651168
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
池田 浩也 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (00262882)
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研究分担者 |
早川 泰弘 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (00115453)
下村 勝 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20292279)
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キーワード | 量子効果デバイス / ペルチェ冷却 / ナノワイヤ / 熱電変換 |
研究概要 |
本研究は,量子効果デバイスを高温動作可能にするためのペルチェ冷却基板の開発を目指している.本年度得られた主な成果を以下に示す. (1)極薄SOI層におけるゼーベック係数制御:極薄SOI(Si on insulator)層のゼーベック係数には,フォノンドラッグの効果が顕著に現れることがわかった.これまでのデータからフォノンドラッグに起因するゼーベック係数を解析したところ,高不純物濃度では濃度に反比例してその効果が減少することがわかった.一方,低濃度領域ではほぼ一定の値であった.この結果は,フォノンドラッグを支配する別の要因が存在することを示しており,現在,この物理的要因について探究を進めている. (2)KFMによるゼーベック係数測定法の確立:ナノ構造材料のゼーベック係数を測定するために,KFM(表面電位顕微鏡)を用いてナノ構造材料の温度測定を試みた.温度に伴う表面電位のシフトが得られ,KFMによる評価の可能性を見出した.現在は,温度評価データの解析手法について検討している. (3)シリコンナノワイヤ熱電モジュール作製技術の構築:n型・p型シリコンナノワイヤ熱電対を作製する際に形成される,ドナーとアクセプターの共ドープシリコンについて,ゼーベック係数を調べた.その結果,共ドープによりフォノンドラッグの効果が抑制されることが示唆された.この原因について,フォノン輸送の観点から考察を進めている. (4)熱電材料用シリコンゲルマニウム混晶の作製:ゲルマニウム基板とSiO2/Si基板を貼り合わせて,リファレンス試料となるGOI(Ge on insulator)基板を作製した.さらに,そのGOI層のゼーベック係数が,バルクGe基板と同じ値であることを確認した.現在は化学的機械的研磨法によるGOI層の薄層化を行っており,膜厚100nm以下に向けた条件出しをしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリコンのゼーベック係数において,フォノンドラッグの効果が大きいことがわかった.また,この効果が共ドープシリコンでは低減することを見出した.これらより,熱伝導特性の制御も含めて,フォノン輸送を制御することの重要性を明らかにした.また,これと並行して,シリコンナノワイヤ試料の作製が終わっており,ゼーベック係数の測定に着手している. GOI基板の作製に成功し,これをナノ構造化するための薄層化および種々のプロセス技術について調査・条件出しを進めている.これらを基に,SGOI(SiGe on insulator)基板の作製に進むことができる.
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今後の研究の推進方策 |
シリコンナノワイヤの熱伝導特性を測定するための装置を構築する.現在は,バルクシリコン基板に対して,周期的光照射による加熱に伴う周期的温度変化の測定から熱拡散率を求めるところまで進んでいる.今後は測定精度の向上とナノ構造測定への適用化を進める. 既にシリコンナノワイヤを複数本並べた試料の作製が終わっており,今後,サイズ揺らぎと熱電特性の関係を統計的に評価していく.また,本年度明らかにしたフォノンドラッグの効果について,フォノン輸送の解析からその物理的要因を解明し,ナノフリーザ基板の設計指針に組み込んでいく.
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