前駆体の反応性の差を利用することで,中心のコアから外側のシェルに向かって化学組成が連続的に変化するCdS/Cd1-xZnxS/ZnSナノ粒子の合成に成功した。得られたナノ粒子は直径が約4nmであり,430nmに発光極大波長をもつ,深青色発光性を示した。分散液の量子収率は85%を超えた。これは,従来のCdS/ZnSコアシェルナノ粒子と比較して遥かに高い。化学組成が連続的に変化させることで,コアとシェル界面の格子ミスマッチによる欠陥の形成を抑制できたと考える。また,反応時間を変えるだけで粒子径を変えることができ,450nm,480nmに発光極大波長をもつナノ粒子を合成した。これらの粒子についても,量子収率は80%以上の値が得られた。 最終目標である,CdS/Cd1-xZnxS/ZnSナノ粒子膜を発光層とする,有機無機ハイブリッドナノ粒子LEDを具現化するには,正孔輸送層と電子輸送層界面にナノ粒子膜を成膜する必要があると考えた。このとき,正孔輸送層とナノ粒子膜の接合が重要であることから,正孔輸送性高分子/CdS/Cd1-xZnxS/ZnSハイブリット膜の成膜に取り組んだ結果,正孔注入層であるPEDOT-PSS薄膜上に,10^11個/cm2 の密度でナノ粒子膜を二次元状に集積したハイブリッド膜の形成に成功した。 4. 深青色発光性有機無機ハイブリッドナノ粒子LEDの具現化 ウェットプロセスとドライプロセスを組み合わて,ITO/PEDOT-PSS/ポリチオフェン-CdS/Cd1-xZnxS/ZnSハイブリット膜/TAZ/Alq3/LiF/Al積層膜を作製したところ,微弱ではあるが,青色の発光性を確認することができた。
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