研究概要 |
平成25年度は、(1)低Tc超伝導体薄膜におけるブロードバンドテラヘルツ時間領域分光透過測定(2)新規銅酸化物高温超伝導体高品質薄膜育成を中心に研究を進めた。 (1)前年度に構築したテラヘルツ時間領域分光系(0.1-2.0 THz)を用いて、超伝導ギャップの観測しうる、転移温度が10K前後の超伝導薄膜(NbNおよびBaPb_xBi_{1-x}O_3)の透過スペクトルを測定し、複素伝導率と超伝導ギャップを見積もった。クライオスタット窓における多重反射など実験上の問題を克服して、特にBaPb_xBi_{1-x}O_3では、はじめて仮定なしに複素伝導率を見積もることに成功した。これまでに報告されているFT/IR測定からのクラマースクローニッヒ変換による複素伝導率とは異なる結果が得られた。 (2)これまでに単結晶試料の得られていないPbSr2(Y,Ca)Cu2O7のエピタキシャル膜を育成して、置換効果、異方性を明らかにした。置換効果については、有効キャリア濃度がCa濃度に比例してCaイオンあたり0.32個のホールキャリアが導入される、という系統性を明らかにした。上部臨界磁場の測定から面内コヒーレンス長を見積もった結果、2.5 nmという、YBa2Cu3O7 (YBCO)より若干短い結果を得た。上部臨界磁場の温度依存性から推測される通常キャリアの平均自由行程から、本物質はYBCOより若干クリーンな超伝導体であるといえる。また、異方性はYBCOよりわずかに大きく、Bi系超伝導体よりもかなり小さい。 以上の物質について、磁場下の測定を行うことにより、渦糸フォトニック結晶を実現することが可能である。
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