ナノチューブの形状特性を生かしたバイメタル型ナノアクチュエータの創成を目指し、今年度は下記の成果を得た。 ①カーボンナノチューブ(CNT)を用いたバイメタル型構造の作製:昨年度は窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)とPtからなるバイメタル型構造について、室温~100℃の温度領域での可逆的な変形動作が実証されたことから、本年度はより構造の多彩なCNTを用いてさらなる極小化を試みた。直径1~3nmのCNTを用いた結果、単一CNTではPt薄膜形成が困難であったが、直径約9nmのバンドルには連続したPt層が形成でき、これが構造上の極小限界と言える。しかしながらこのPt層は粒径1~3nmの多結晶膜であったため、わずか100℃の温度上昇によって収縮し、塑性変形を生じた。総じて、本研究で作製した系では、直径約20nmのナノチューブ上に粒径5nm以上の比較的安定なPt薄膜層を形成したバイメタル型構造がアクチュエータとして機能しうる極小限界であることが示された。 ②バイメタル型アクチュエータ性能向上に資する構造制御の検討:昨年度成果より、さらなる動作領域の拡大にはナノチューブの有する高い剛性を制御するためのイオン研磨加工の有用性が示され、本年度は研磨によるCNTの構造変化と剛性の相関をより詳細に調べた。剛性は、昨年度に引き続き電子顕微鏡内で個々のCNTに高周波静電場を印加して共振を観測することにより評価した。その結果、1kV・3分間の研磨処理によって、CNTの外層から数層が剥離する場合と、一方向から研磨される場合が確認され、前者は剛性がほぼ変化しなかったのに対し、後者は約一桁低減した。研磨による剛性変化は、外形変化だけでなく同時にイオン照射損傷による局所的なアモルファス化が生じることに起因していることが示唆され、剛性制御を精度良く行うためのナノチューブ1本レベルの加工に関する指針を得た。
|