アゾベンゼン分子のトランス体とシス体の吸収が重なる波長の光照射、あるいはアゾベンゼン骨格の両末端に電子供与性基と電子吸引性基を有するプッシュ・プル型アゾベンゼン分子のトランス体からシス体への速い熱戻り反応を利用することで、単一波長の光照射によりトランス体-シス体間の連続的な光異性化サイクルを実現できる。トランス体の分子は棒状、シス体は屈曲しており、連続的な光異性化反応は、“バネ”の伸縮に類似している。本研究は、この連続的な分子形状変化を駆動源とする「微小物体を捕捉/運動材料」開発を目指し、以下の二つの系について検討した。 (1)液晶マトリックスにアゾベンゼン分子を添加した系:非プッシュ・プル型アゾベンゼン分子およびプッシュ・プル型アゾベンゼン分子に二つにタイプのアゾベンゼン分子を用いた系において、光照射に伴うトランス体-シス体間の連続的な光異性化サイクルによる液晶マトリックスの配向構造の変化(ネマチック相-等方相、スメクチック相-ネマチック相)を利用することで、微小物体の捕捉・操作することに成功した。 (2)微小物体表面をアゾベンゼン分子で修飾したものを液晶マトリックスに分散した系:長さ30~50ミクロン、直径10ミクロン程度のガラスロッドに、シランカップリング基を導入した非プッシュ・プル型アゾベンゼン誘導体、プッシュ・プル型アゾベンゼン誘導体を処理することで、表面修飾した微小物体をネマチック液晶に分散した系で実験を行なった。プッシュ・プル型アゾベンゼン分子を表面修飾したガラスロッドでは、光照射により、ガラスロッド周辺に液晶配向構造が乱れた状態で誘起され、光照射部位を移動させることでガラスロッドを操作することができた。
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