経済現象において,大変動・非定常・非線形な性質が及ぼす影響は非常に大きく,これらの性質が現象の本質になっている.様々な形式の経済データについて,これらの性質を前提とした精確な実証分析を行い,スーパーコンピュータを活用した計算集約的経済分析の手法を提案し,その有効性を検証した.日本企業約100万社の間の取引関係を表す有向ネットワークデータについて,業種や地域の異質性を考慮した上で統計的有意なつながりの影響を特定するために,各企業のリンク数を保存する条件下で同業種や同じ地域の企業同士でリンクをランダムにつなぎ替えたネットワークを作成し,部分グラフの出現回数を実ネットワークと比較することにより,統計的有意に出現する部分グラフを抽出し,業種や地域に特徴的なネットワーク構造を明らかにした.不動産の物件属性に関する多変量データについて,同じ属性間でデータをランダムに入れ替えたデータを作成し,クラスター分析などの多変量分析の手法で得られる結果を実データと比較し,統計的有意な多変量相関を明らかにした.不動産の空間データについて,二次元空間上の物件分布の特徴を探るために,物件の緯度・経度をランダムに入れ替えたデータを作成し,さまざまな物件属性の統計的有意な空間相関を抽出し,物件分布の空間構造を特定した.ビジネスニュースや新聞などの文字データについて,同じ品詞同士をランダムに入れ替えたデータを作成し,言語処理の手法で得られる結果の統計的吟味を行った.
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