福島第一原子力発電所の事故から生じた放射能汚染の結果、消費者が被災地で生産された商品を避けるという傾向は、特に国外市場で、さらに国内市場でも確認されている。本研究では、平成25年度にまず製品が持つ放射能汚染リスクに対する消費者反応の原因及び文化的相違の探求を深め、企業や公共機関がとるべき対策を導くことにした。前年度に開始したアンケート調査を継続し、米国とボリビアから収集したデータ数を増やし、またフランスおよびスリランカ、エクアドルで同様のアンケート調査を行った。さらに、欧州と米国の研究者との協力で、理論構築を進め、研究成果を国際会議および学術誌で発表した。 発表した論文では、自己カテゴリー化理論に基づき、製品が持つ放射能汚染リスクに対する消費者反応の原因及び文化的相違を説明する概念的枠組みを構築し、実証研究で検証した。その結果、放射能汚染リスクによる購買低減反応が特に強いのは、携帯電話よりも食べ物の文脈、日本人よりも外国人(特に欧米人)の消費者、そして中年と年配の消費者である。文化性向の中では、不確実性回避は放射能汚染リスクによる購買低減反応に正の影響を与える一方で、男性らしさと長期的志向は負の影響を与え、また権力差と個人主義は影響を与えないという結果を得た。継続研究の論文では、まず新たなデータで前述の結果を再現することができ、さらに製品が持つ放射能汚染リスクに対する消費者反応の追加的な要因を特定した。消費者の購買低減反応を主に引き起こすのは、放射能汚染に関する知識である。その知識を構成する要因は、主に観察した他消費者の購買パターン、またマスコミの客観的な報道、および消費者の原子力発電所に反対する今までの姿勢となっている。一方、マスコミの情緒に訴えることを狙う報道、および災害経験、社会的ネットワークの災害による被害は、逆に消費者の購買増大反応を引き起こす傾向がある。
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