研究課題/領域番号 |
24651181
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
森川 展男 近畿大学, 社会学部, 教授 (00230102)
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キーワード | いじめ / 体罰 / 通報義務 / 予防 / 地域連携 / 米国 |
研究概要 |
「しつけ」ということばで子どもへの「虐待」が見過ごされることが多く、結果として虐待死を生むケースが多い。問題は虐待を生む直接・間接の原因を少年期からの「いじめ」や「体罰」と虐待との関係を、家庭、学校、地域社会等との連携から探る必要があると考える。その啓発活動の一環として、虐待の原因を探り、子どもを虐待から守るための具体的な方策についてフォーラムを開催した。 都道府県別社会実体の諸々の統計データから2世代、3世代同居の割合、失業率、生活保護支給実態等についての分析を行い、さらに虐待相談件数、離婚率、共働き率をクロス分析していく。ここで予測される結果である、都市部と地方との諸々の差異、例えば、「共生社会政策関係都道府県別指標データ」で示された都道府県と指数との因果関係を検証することになる。 同様のことを米国における幼児虐待(児童を含む)の統計データと都道府県別府県別社会実体の諸々の統計データとを照合することによって米国での虐待および虐待がもたらす犯罪への各地域、州、国の対策と効果について精査した。 米国は「虐待先進国」であり、それに対応する仕組みも進んでいる。社会システムとして虐待対策を行っている点では、日本は後発である。 日本では通報件数を集約できるセンターに相当する機関がいまだにない。したがって、日本では虐待通報の正確な数字は把握出来ていない。具体的方策の提議に向け、諸々の要因の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度同様、日本国内から3名の専門家を招きフォーラム(前述)を開催した。次に焦点を当てたのは以下のことである。 ■情報犯罪と子ども虐待【領域横断的教育および研究の必要性】 激増するこども虐待問題について本邦では様々な取り組みが行われている。ところが、先の定義で紹介した「性的虐待」は、家庭内という状況と問題の性質上、その実態把握は極めて困難な状況にある。 また、これを家庭内に限って捉えることは、グローバル化する社会の動きにも反する。それは先掲のISCCAの定義からも理解できるように、子どもの不当な扱いについては、施設内、家庭外、その他の生起しうる他の領域に跨がって考える必要があるからである。本邦では、この「性的虐待」についての取り組みは、著しく立ち遅れている。それは、今日の「情報倫理」教育の問題とも関連している。インターネット社会の爆発的普及に伴い市井に氾濫した携帯端末は、本来「専門家倫理」として上位概念にあった「倫理」を、技術・テクノロジーの下位概念へと零落させる結果になった。日常生活を豊かにする目的で開発された技術や道具が、一人歩きをはじめ、現代人は道具に使われていると言っても過言ではないまで、その使用目的を考える能力を手放しつつある。その典型的な一例が、携帯電話のマナーボタンであろう。電源を切ることができなくなった現代人は、道具の意味さえも考えられなくなりつつあることを筆者は、大学における「情報倫理」講座を担当しつつ痛感させられている。 問題は倫理観の退廃に留まらない。ネットを介しての様々な人権侵害や情報犯罪、なかでも3分の2以上を占めると言われるネットを介しての性犯罪被害の低年齢化は、こどもの生育環境および、こどもの育つ家庭環境を著しく蝕む社会的病理である。まさに将来父親・母親になる人たちとともに「考え、学び、行動」しなければならない焦眉の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
■最終年度となる本年度は児童虐待予防のための施策の一つを公共団体に提言を行うことを研究課題のひとつとする。また、本学に児童虐待防止センター(仮称)の設立準備を行うことももう一つの課題とする。前者に関しては対象とする大阪府の虐待相談数、虐待認知件数が日本でもワーストスリーに入っている。児童虐待予防の施策を社会環境、とりわけ住宅環境の改善から提案していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね当初の課題に相応した予算を必要とした。 講演者謝金に使用する。
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