本研究では、都市計画に反映する太陽光発電システム群の大量導入に関する指標として、1)郊外戸建住宅へのPVS導入の実質的CO2排出削減効果、2)配電系統における電圧上昇の抑制、3)系統事故時におけるPVS群一斉脱落の影響を評価し、これらの得失を説明変数として、都市域におけるPVS大量導入のあり方を提案するものである。2)に関して、昨年度構築した500mメッシュ単位で電力需要1時間値を算定するモデルに対し、各配電変電所の供給エリアの設定する手法の適用、電力需要の算定における気温感応度の考慮などの改善を行い、愛知県内298ヶ所の配電用変電所の供給エリアを対象として、電圧上昇に関わる指標としてエリア単位の最大余剰電力および年間余剰電力量を評価した。その結果、住宅用・非住宅用PVSが戸建住宅分布に基づく場合(Case-1)と比較して、非住宅用PVSの導入容量が戸建住宅や店舗・オフィスビル等が少ないメッシュにおいて大きくなる状況(Case-2)では、愛知県全体における導入容量の地域差は小さいものの、最大電力需要に対する最大余剰電力の割合(比最大余剰電力)が150%に達するエリアも発生した。また、各エリアにおいて比最大余剰電力100 %まで許容できると仮定した場合、導入可能なPVS容量はCase-1に対してCase-2では15%も減少することや、逆にデマンドレスポンスによる昼間電力需要の増加やPVS出力の抑制によって3 GWのPVSを導入するためには、対応すべき年間の余剰電力量はCase-1に対してCase-2では40%も増加することなどを確認した。これらの検討を通じて、PVS導入側の視点では、Case-2のように郊外への導入拡大が有効であるが、系統への影響を緩和するという観点からは、Case-1のように電力需要が大きいエリアのPVS導入容量を増加させることが重要であることがわかった。
|