風力発電開発では、定常的な高風速発現地域の選定が最も重要で、大型機器を海岸などに集中的に配備するウィンドファーム構築が前提になっているが、定常的な風速発現地域が都市部近郊に少ないわが国では、風力エネルギーの大規模利用は一部を除いて適さないと言われており、中小規模風力発電機器を利用した分散型電力(マイクログリッド)が有望視されている。しかし、中小規模の風力発電システムに対しては、風速や風向の変動の大きさによって、期待された風車の発電性能よりも実際の発電量が低下することが顕在化しつつあり、風向風速変動の少ない安定した高風速の発生が重要となる。本研究では、九州全域の風向風速及び風速変動の年間推移情報データベースを整理し、わが国固有の風況特性に視点を置いた“風力のエネルギーポテンシャル”を算定し、“送電線網を利用した風力発電及び送電拠点の分散マイクログリッド構築の実現”に寄与する情報を提供することを目的とする。 最終年度である平成25年度は以下の手順で研究を遂行し、研究成果を取りまとめた。(1)前年度に取りまとめた風情報データベースを基に、風向風速変動を考慮した風力エネルギー密度マップを作成した。(2)送電線網に配置した各観測点位置で算定される風力エネルギー密度と風情報との関係を検討し、風況から推定される風力エネルギー量をまとめた。(3)マイクログリッド構築に有用な中小規模風力発電機器を想定し、風力エネルギー密度から出力電力量を算定して発電量マップを作成した。(4)風力エネルギー密度分布と出力発電量分布を比較し、発電量に及ぼす発電機器の影響を検討した。(5)作成したマップをもとに、九州地区での風力発電機設置適地の選定を行い、風力発電によるマイクログリッド構築の可能性を示した。
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