研究課題/領域番号 |
24651191
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 八戸工業大学 |
研究代表者 |
工藤 祐嗣 八戸工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80333714)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 消火 |
研究概要 |
平成24年度は高沸点の炭化水素燃料を用いたプール火災の消火実験を計画していたが,本研究で提案する消火泡に不活性ガスを封入した植物性バイオマス消火法については,封入する不活性ガス種が消火性能に及ぼす影響が大きいと考えられたため,不活性ガス種による消火性能の変化を明らかにする研究を先行して行った.消火ガスには過去の実験ではCO2を使用していたが,今年度はN2,HeおよびArを使用し,その消火性能の変化を調査した.CO2による消火と比較しても,消火時間のバラツキは少なく,比較的安定した消火ができた.しかし,ArおよびHeによる消火では,N2に比べ幾分消火時間にバラツキが生じた.消火ガスにHeを用いた場合には,ガスが周囲空気に比べ軽く,気泡の大きさは他のガスに比べ大きく,泡の厚さは厚くなった.また,消火ガスにArを用いた場合には,他のガスと比較して泡の流動性が低く,連続的に泡を火源に供給するのが困難となった.実際に消火に寄与した消火ガス量を算出するため,火源を上方より撮影した映像より画像処理によって泡による被覆面積を求め,この結果より火源に供給されるガス量を概算する計算モデルを構築した.モデルによる解析の結果,概ね40~60%,最大で80%近い泡が崩壊し,消火ガスへと変化していることがわかった.特に消火初期において崩壊率が高く,消火泡が火源を覆うにつれて崩壊率が低下し,泡による火源の被覆が消火効果を発揮する.以上より,火炎へと供給される消火ガスの量を定性的に知ることができたので,消火ガス種による消火効果の違いについても考察した.消火ガスが消火成功までに火炎より持ち去る熱量を比較したところ,ArとN2は近い値となったが,Heは幾分大きい値となった.これは密度の小さいHeの浮力効果を考慮していないためと考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究申請後,消火法に影響を及ぼす因子として消火ガス種の影響が浮上したため,先行して研究を行った.当初予定していた燃料種による影響については,今年度以降構築する実験装置によっても実験は可能であり,本研究の進行に影響は及ぼさないと考える.また,消火ガス種を変えた実験により,消火に与える消火ガス種の影響を定量的に評価する手法を開発でき,泡消火に限らず,火災消火のメカニズムを明らかにする結果が得られたものと考える.これらを総合的に評価すれば,本研究の目的に対する達成度は概ね順調に推移すているものと評価できる.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は,これまでの実験装置をスケールアップし,より実火災の状況に近づけた実験装置の構築を行う.これまで解明できた消火メカニズムについて,より実スケールに近い状況でも成立するのかを解明することは,本研究で提案している消火法を実用化するために重要であると考える.また,前年度実施を見送った燃料種の影響については,火源スケールによる影響を強く受けるものと考えられるので,より実規模に近い実験装置で実験を行うほうが適切であると考えられ,研究計画の一部変更を行った.来年度以降,燃料種の影響を解明する研究を実施することを計画している.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,より実規模に近いスケールでの実験装置の構築を行う予定である.主として実験装置の製作に要する消耗品の購入に物品費を充てることを予定している.また,研究成果発表として,日本火災学会での研究発表を予定している.
|