研究課題/領域番号 |
24651194
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
笹 健児 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (10360330)
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研究分担者 |
塩谷 茂明 神戸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00105363)
若林 伸和 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (60242351)
大澤 輝夫 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (80324284)
寺田 大介 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (80435453)
小林 英一 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (90346289)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 波浪予報 / 気象予報 / 船舶運航 / 冬季低気圧 / 予報失敗 / 統計予測 / データ分析 / 海洋気象 |
研究概要 |
本研究は初年度の実施に当たり、船舶が活用している波浪予報、ウェザールーティングの利用状況、信頼性、問題点をまず明らかにする必要があると考え、船舶関係者に対してアンケート調査を実施した。この結果、外航船および内航船ともに信頼が60%以下と回答したのが全体の1割を占め、現状の気象海象の予報は船舶運航に対して十分ではないことが明らかとされた。これを参考に、太平洋を航行する大型フェリーの運航者に対し、過去に予報が失敗したときの状況を詳細に聞き取り、このときの気象海象データを交えて検証を行った。予報が失敗した2例とも冬季の低気圧による状況であり、日本の南方海域から急激に発達しながら北上する中、風の予報が実測値よりもかなり小さい値であったがこれを信頼して出港したケース、低気圧の発達は予想していたが有義波高の予報値が実際の0.5倍しかなかったケースであった。後者のケースについて、関東から東北沖での波浪状況をデータより検証した結果、有義波高の発達ピークが予報よりも長く継続していたこと、低気圧の位置関係と東北沖で1日程度停滞したことから波向が東方向であり比較的フェッチの長い波浪が発達した状況まで予報できていなかった。波浪の時系列データを見る限り、有義波高の数倍以上に相当する極大波の存在は確認できず、最大波高は有義波高の2倍以内で発生していることも明らかとなった。これらの状況について予報ができなかった原因を明らかとするため、風の予報および波浪予報を様々な条件下で再現し、低気圧が急激に発達する場合での数値予報の精度を向上させるためのアルゴリズムを次年度に研究する予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の12月ごろに大型フェリーに気象観測装置を設置し、この冬からの観測を開始する予定であったが、事情により設置が3月にずれたため、気象データの計測が3ヶ月遅れとなった。また研究代表者・笹が初年度の10月に広島商船高等専門学校から神戸大学に異動となったため、当初の作業に遅延が生じている。2年目から遅れを取り戻した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、波浪予報が失敗した過去の事例をもとに風および波浪の数値予報(WRFおよびSWAN)にて再現計算を行っている。計算の解像度(格子間隔、時間間隔など)を様々に変化し、これらが予報精度におよぼす影響を明確とする。これらの数値予報と実測値の誤差を統計的に分析し、この誤差を補正するアルゴリズムを考案する。また、3月より大型フェリーにて気圧、風向、風速、気温、湿度などの気象パラメーターだけでなく、位置、方位、速度、船の揺れを長期間にわたって連続観測を開始しており、陸上と異なり観測データそのものが少ない貴重な海上でのデータを蓄積・整理し、数値予報での予報精度の検証と改善を最終的に行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の成果を国際会議にて講演するため(フランスで開催)、約40万円を使用予定 現地観測におけるデータ通信費用として、6万円/年を使用予定 現地観測のデータ回収に本船(関東または北海道)を2回訪問 約25万円を使用予定 観測データの分析、数値計算のための計算機を購入予定 40万円 観測用の消耗品を交換予定 20万円
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