火山噴火の前にマグマ本体やマグマから発散される火山ガスが地表近くに移動してくるはずである.この物質の移動は,主として地殻変動観測によって捉えられているが,地殻変動をもたらしている原因がマグマであるか,熱水であるか,火山ガスであるかを判別するには,重力観測が有望と期待されている.従来,重力観測は絶対重力計などによる観測が行われてきたが,ここに重力勾配観測を行うことにより重力変化をもたらしている密度変化の深さに関する大きな制約条件が与えられる可能性がある.重力勾配計は,東京大学宇宙線研究所の黒田教授が開発し,実験室レベルでは勾配の計測に成功している.この重力勾配計が実際のフィールドにおいてどの程度適用可能であるか,どのような改良が必要かを検討するのが本研究の目的である. 平成26年度は,勾配計を桜島火山観測所に設置し,繰り返し測定をおこなった.桜島に移設する際に,障害が発生し,機構上の問題が明らかとなった.繰り返し測定においては,測定器下部に鉛質量を置いた場合と外した場合を比較することによるキャリブレーションを行い,半日程度の繰り返し測定によって有意な変化を検知することができた.これらの問題は潮見の研究において,新しい勾配計の設計に活かされる予定である. 一方,阿蘇火山における地下水の移動がどの程度起きているかを検討するため,過去に得られていた超伝導重力計の測定記録の再解析を行った.その結果,火口近傍において,地下水変動に伴うと思われる有意な重力変動を検知できた.こうした結果から,フィールドにおいて使用可能な重力勾配計を開発すれば,地下水流動に関して有意義な観測をおこなえる見通しをつけることができが,重力勾配計をフィールドで使用するには,勾配計の改良をさらに進める必要があることが明らかとなった.
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