研究課題/領域番号 |
24651200
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
塩谷 茂明 神戸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00105363)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 津波 / 災害 / 津波伝搬予測 / 船体運動 / 防災 |
研究概要 |
東北地方に、巨大地震と未曾有の大津波が発生し、津波予測の不備から、避難が遅れ、大被害を被った。津波予報は、国土交通省のナウファスで行っている。しかし、当時の波高計は大津波のため機能を発揮しなかった。しかし、GPS式波浪計の増設等が検討されている。本研究では、対象船舶に搭載が義務づけられた、AIS(船舶自動識別装置)からの情報を利用し、津波の早期伝搬予測ができる、世界初の津波予測計を開発する。これらをシステム化する。 その第一歩として、津波の被害が甚大であった海域を分けて、海域毎に航行中の船舶からのAISデータを収集し、各船舶が津波を遭遇した際の、時刻、船体運動を詳細に解析し、津波の伝搬特性を推定する。津波到達等時間差曲線の図示から、津波の伝搬過程を場で表現する。現実に津波が到来した時間の調査、津波伝搬の数値シミュレーション結果等との比較検証から、AIS波高計から得られた結果の精度検証を行う。東日本全域、太平洋岸一帯の海域など、大津波警報、津波警報、津波注意報が発令された海域でのAISデータの解析を行い、広い海域での有効性を検討する。最後に、AIS波高計による津波伝搬予測システムを構築する。 平成24年度の計画で、以下の項目を実施した。 (1)海域毎に、多数の船舶からのAISデータを収集した。特に、青森県南部から岩手県北部の沿岸域航行船舶を中心に実施した。(2)AISデータを整理、解析し、各船舶が津波に遭遇した時の、時刻を定め、津波により影響を受けた各船舶の船体運動を把握した。(3)津波に遭遇した船舶から、津波の伝搬方向、周期、波高等を推定した。波高の推定は、今後の課題である。(4)船舶が津波に遭遇した時間をプロットし、津波の到達等時間差曲線を図示し、津波の伝搬を推定した。(5)各地で津波の到来時間を推定し、警報を発令する。これはまだ実施していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画に基づき、研究を進めた。 東日本大震災が発生した時間帯の東北地方から、四国に至る沿岸海域を航行の船舶が搭載するAISデータを収集した。最初に、青森県南部から岩手県北部の沿岸域航行船舶を中心に、AISデータから個々の航行船舶の挙動の解析を実施した。AISデータから、個々の船舶の船位、針路、速力、現在位置などの船舶の動静を追跡した。各船舶は船名、航行先、積荷の種類などの情報も詳細に得られるので、対象船舶の名称や、船種も知ることができる。これにより、他船の詳細な動向を整理、解析して、各船舶が津波に遭遇した時の、時刻を定めた。この時間を中心に、津波により影響を受けた各船舶の船体運動を把握した。 津波に遭遇した船舶から、津波の要素である伝搬方向、周期、波高等を推定した。しかし、波高の推定は現時点では十分でなく、今後の課題である。 各船舶が津波に遭遇した時間を海図上にプロットし、各プロット点の位置から津波の到達等時間差曲線を図示し、津波の伝搬を推定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究成果から、以下の項目について、実施する。 (1)大容量のAISデータを処理可能なソフトを用いて、大容量のAISデータを迅速に処理するシステムの開発を行う。(2)AISデータの収集から津波の到達時間差曲線を求めるまでの、一連の過程をシステム化し、津波伝搬早期予測システムを創出する。 (3)東北沿岸域だけでなく、東日本全域、太平洋岸一帯の海域など、大津波警報、津波警報、津波注意報が発令された海域でのAIS データの解析を行い、広い海域での有効性を検討する。(4)津波の数値予測結果のデータから、漂流する航行船舶の挙動の数値シミュレーションを行い、実船舶の漂流との比較検証を行う。(5)西日本においても、今後20 年から30 年の間に、今回の地震と同規模の海溝型地震(南海・東南海連動型地震M8.7)が高確率で発生することが予期されており,関係行政機関、研究機関等が共同して対策のための事業を推進してきたことは周知のところである。このような状況に鑑み,今回の東北地方太平洋沖地震による津波災害について本研究を進めることにより、南海・東南海地震による津波災害をできるだけ最小限に食い止める津波伝搬早期予測システムの構築、提言を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品日として、大容量のAISデータの処理用のソフトを購入する。(約40万円)人件費はアルバイトあるいは研究員を雇用する。(約50万円)旅費は海外出張1回(約45万円)、その他国内出張(約20万円)を予定する。それ以外は各種消耗品、論文投稿料等に使用する。
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