研究課題
2012年2月から2013年8月まで、広島大学が世界に先駆けて開発した沿岸音響トモグラフィー装置を音響津波流速計として、瀬戸内海中央部の安芸灘に設置して、太平洋から瀬戸内海に侵入する津波の計測を試みた。この期間中、津波は発生しなかったため、代わりに潮汐波を計測したことになった。潮汐波も津波と同様に太平洋から瀬戸内海に侵入する海面重力波であるため、潮汐波を計測できれば、津波計測に対して音響津波流速計は有効であることになる。津波は通常、海面の変位として海上保安庁などの検潮所で計測されている。本計測法の最大の特徴は、津波の通過を海面変位ではなく、海中に誘起される振動流の流速でキャッチすることにある。津波の周期は、瀬戸内海内部では、1~2時間程度で、潮汐の主要周期12時間に比べてかなり短い。そこで、津波の計測は、潮汐波よりも短い時間間隔で実施する必要がある。呉市大崎下島と今治市菊間の防波堤の先端に沿岸音響トモグラフィー装置を各1台、海中設置し、音波装置(音響局)間で12次のM系列(疑似ランダム信号)で位相変調した周波数4kHzの音波を5~10分間隔で送受信する。そして、音波の伝播時間差を、GPSを利用した高度クロックシステムを利用することにより、本海域を通過する潮汐波が海面下に誘起する潮流を1cm/sの精度で精密計測した。この計測時間間隔は、潮汐波より周期の短い津波に対しても十分有効なものである。また、流速の計測精度1cm/sは海面変位約2cmに相当するため、非常に弱い津波に対しても応用可能であることになる。以上の結果、本研究により音響津波流速計の有効性を実証できたといえる。
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