1.凍結融解地盤の浸透侵食・崩壊現象の影響因子の検討 (1)凍上性地盤材料で構成される模型地盤に対して、凍結前・凍結時・融解時に流水圧を変えながら流水浸透侵食実験を実施した。その結果、昨年度実施した凍上性を示さない砂質土と異なり、凍上性地盤材料では、凍結融解時の密度・土粒子配列の変化により透水係数が変化することを確認した。 2.相変化依存型土砂災害発生機構の数値解析手法の確立 (1)模型試験結果との比較検討により、透水係数の異方性と凍結融解作用が透水性に及ぼす影響を評価すれば、熱伝導・浸透連成FEM解析で凍結融解地盤内の浸透流を精度良く予測できることを示した。(2)昨年度開発した粒子法(SPH、MPS)に基づくモデル化法を用いて既往の粒状体動態を対象とした実験の数値解析を行い、SPH法はMPS法に比べて計算機負荷が小さく精度も良好であるが、入力パラメータが多く、これらの適切な同定が不可欠となることを示した。また、土砂と流体の相互作用に関する模型実験とその数値解析を行い、実験結果を簡易な横断方向一次元土砂・水理モデルにより概ね再現できることを示した。 3.研究の総括 (1)凍結融解地盤の浸透侵食挙動を検討する模型試験法を確立するとともに、凍結融解地盤の浸透侵食特性に流水条件、凍結融解条件、地盤材料の凍上性や浸透・保水性が強く影響することを示した。(2)地盤の凍結融解・浸透侵食複合型崩壊現象の解析手法として、熱伝導・浸透連成FEM解析により凍結融解地盤内の浸透流を予測し、その後粒子法(SPH、MPS)を用いて凍結融解地盤内の浸透流による土砂の流出過程を再現するモデル化法を提案した。(3)凍結融解現象を含む幅広い土砂・流体連成問題に適用可能な解析手法を開発し、当該解析手法により浸透流のある凍結融解地盤で生じる相変化依存型土砂災害発生機構を検討可能であることを示した。
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