研究課題/領域番号 |
24651207
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹見 哲也 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10314361)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 台風 / 風水害 / 最大可能強度 / 物理ダウンスケール / 気象予報モデル / 気象災害 |
研究概要 |
「台風はどこまで強くなり、想定される風水害はどの程度の規模なのか?」この問いに対して、与えられた大気・海面水温の条件において仮に発達を阻害する要因を除外した場合に最大到達可能な強度の台風を気象モデルによる物理ダウンスケール・シミュレーションにより再現し、最大到達可能強度の台風により想定される風水害を評価することを目的とした。本研究では気象モデルWeather Research and Forecasting (WRF)を用いた数値シミュレーションを行った。WRFモデルは領域気象モデルであるため、初期条件・境界条件となる大気・海面水温の条件が必要となる。そのため、大気の客観解析データから台風発生の環境条件を抽出した。次に、台風発達の好条件をWRFモデルの初期条件・境界条件に与え、与えられた大気・海面水温の条件において台風の数値シミュレーションを行い、発達に好都合な条件が持続して台風は移動しないとした場合に最も強くなりうる台風の強度(最大到達可能強度)を算出した。日本の南海上の多数の位置に台風中心を置くことで、最大可能強度の台風を客観解析データに埋め込み、台風の移動のシミュレーションを行った。2001年以降で関東地方に接近または上陸した顕著台風について、台風移動に伴う降水量・風速の空間分布と時間変化を1 kmメッシュで算出した。数値シミュレーションには京都大学の大規模並列型スーパーコンピュータを利用した。得られた計算結果から、格子点別に降水量・風速の時間変化や積算値・平均値・最大値・頻度分布など風水害に係る統計量を算出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、「台風はどこまで強くなり、想定される風水害はどの程度の規模なのか?」という問いに対して、気象モデルによる物理ダウンスケール・シミュレーションを行うことにより最大到達可能強度の台風により想定される風水害を評価することである。このために、台風の中心位置をずらして台風経路を多数のパターンに変化させたシミュレーションを実施し、最大想定強度の風水害を地域毎に評価することを目標としている。平成24年度においては、与えられた大気・海面水温の条件において仮に発達を阻害する要因を除外した場合に最大到達可能な強度の台風を気象モデルによる物理ダウンスケール・シミュレーションにより再現した。また、関東地方に接近または上陸した顕著台風を対象として、台風の中心位置をずらすことにより台風経路を操作し、異なる経路によりもたらされる風水害の時空間分布を算出した。このことから、研究目的のうち、関東地方における顕著台風を対象とした解析を行ったことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、関東地方以外の主要都市圏を対象として、顕著台風による風水害分布の物理ダウンスケール・シミュレーションを実施する。台風の最大可能強度の数値シミュレーション、台風の移動の数値シミュレーションを平成24年度に引き続いて行い、格子点別の降水量・風速の統計量を算出する。本研究での計算から、顕著な台風の事例の大気環境条件で想定される最大可能強度の台風を評価し、日本全国を地方毎に1 kmメッシュで分割したときの降水量・風速の統計値を算出し、最大可能強度の台風に想定される風水害の評価を行う。研究で得られた成果は、国内外の学会や会議において発表し、学術雑誌に論文として発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
台風の最大可能強度の数値シミュレーション、台風の移動の数値シミュレーションを平成24年度に引き続いて行うため、京都大学の大規模並列型スーパーコンピュータの利用の経費に使用する。また大容量の出力データを保存かつ保管するため、ハードディスクケースおよび大容量ハードディスクを購入する。研究で得られた成果を国内外の学会や会議で発表するための旅費および参加費として使用する。また、学術雑誌の論文投稿料および印刷料として使用する。
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