災害に結びつく地上における強風は,雷雨や竜巻に伴うものや地形的な強風以外に,上空(大気境界層上部から自由大気にかけて)の強風層の降下により引き起こされる場合がある。この研究では,地上での強風の出現状況と気象条件を調査し,その発生機構を明らかにして,それを予測する手法を開発することを目的としている。 上記の研究目的のため,観測場所として,複雑な地表面状態と周囲環境を持ち,また,人間活動が実際に行われている場所として都市近郊にある京都大学防災研究所宇治川オープンラボラトリーを選んだ。そして,2012年12月から2013年3月の冬季から春季にかけての時期に観測鉄塔の高さ25mと40mに設置された超音波風速計により接地層乱流の観測を行った。また2013年6月から7月にかけての夏季には乱流観測に加えて,上空の風速3成分の時間変化を測定できるドップラーライダーにより40mから200mまでの高さにおける風の日変化を測定した。 これらの観測により,大気境界層における日中での混合層の発達などの大気境界層構造の変化による上空の強風層の地上付近への侵入,また大気境界層の大規模な乱流構造に伴う地上での強風についての現象を調べた。 今後については,より多くの観測例を解析し,地上での強風が発生する気象条件をより詳細に調べていく必要がある。また,他の場所での気象データなども調べ,地域的な特性も明らかにする必要がある。
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