研究課題/領域番号 |
24651209
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小島 尚人 東京理科大学, 理工学部, 教授 (00205387)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 斜面崩壊誘因広域逆推定 |
研究概要 |
本研究は、斜面崩壊危険箇所評価支援を目的とし、衛星リモートセンシングデータ(以下、衛星データ)と各種地理情報を併用して「斜面崩壊誘因影響図」を作成し、その実用性を示すものである。研究は2ヶ年で実施し、衛星データと各種地理情報を素因(説明変量)とし、既崩壊領域を教師データ(目的変量)として、斜面崩壊連鎖誘因逆推定手法を構築する。さらに、誘因影響分析を簡便な操作で実行できるように、操作性に優れたユーザーインターフェイス(GUI:Graphical User Interface)を備えた誘因影響分析システムを構築する。 初年度にあたる平成24年度の研究成果は、以下の3項目にまとめられる。 ①「潜在危険斜面の斜面崩壊形態推定支援策」として、斜面崩壊形態別評価図間の差分処理(一対比較)ではなく、むしろ合成処理であることを指摘した上で、誘因逆推定図を擬似カラー合成し、これを「斜面崩壊形態別誘因影響図」として提示した。 ②相関色温度を用いて,誘因逆推定図をBGRプレーンに割り当てる際の組合せ事象を決定する考え方を提示した。斜面崩壊形態別誘因影響図上の発色の違いに基づけば、複数の崩壊形態間の誘因影響を同時に分析できることを確認している。 ③さらに,斜面崩壊形態別誘因影響図とこれに対する一般解釈表を併用すれば、斜面崩壊形態を異にする同時多発型潜在危険斜面の広域推定支援に寄与できることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、斜面崩壊形態別に作成される3種類の誘因逆推定図をカラー合成した「誘因影響図」を提示し、その有用性を示した。この誘因影響図の提案が本研究の目標の一つでもある。誘因影響図上の色情報によって、「表層崩壊型、深層崩壊型、地すべり型」といった崩壊形態別・誘因影響の違いを一目で把握・分析できることを示している。カラー合成処理時の誘因逆推定図の組み合わせ問題、カラー合成処理によって作成される誘因影響図の解釈問題についても検討した。これらの結果は、関係学会に発表するに至っている(査読付き論文2件(英文1件、和文1件)、講演論文集3件、学会口頭発表3件)。 初年度の研究をベースとして、さらに、斜面崩壊形態別に逆推定誘因間の相互分析アルゴリズム(数量化IV類)を提案し、誘因影響図上の情報の有用性について、さらに分析を進める予定にある。これらの検討においても初年度の研究内容が役立つことになる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の課題は以下のとおりであり、当初の計画どおりとなる。 (1)システム設計と開発:平成24年度に開発した誘因逆推定手法を活用できるようにすべく、スプレッドシート環境下(インターネット含む)で稼働する「斜面崩壊誘因影響分析システム」を構築する。本研究で提案する斜面崩壊形態別・誘因逆推定図のカラー合成画像、すなわち「誘因影響図」上の情報を利用して、現地計測機器(サクション、土壌水分計、温度計等)を設置する場合の位置選定支援に関する検討を進める。これらの情報を教師データに反映させ、「点」から「面」への崩壊危険箇所評価を実施できるシステムの構築へと展開する。誘因影響図を作成するまでの一連の処理を簡易な操作で実行できるように操作性に優れたユーザーインターフェイス(GUI:Graphical User Interface)を設計・開発することが検討課題となる。 (2)適用事例の蓄積:適用事例の蓄積も並行して進めている。平成22年7月16日に広島県庄原市を襲った集中豪雨によって発生した同時多発型源頭斜面崩壊を教師データとし、誘因逆推定精度について検討も進め、平成25年度も引き続き検討する。源頭部斜面崩壊に関する教師データの感度分析結果が整理される。これらの検討を通して、データセットを継続して蓄積する上で発生する問題も整理される。 (4)システム操作マニュアルの整備と研究成果のとりまとめ 本研究を通して開発されるシステムを実務において運用できるように、平成23年度~24年度にわたる2ケ年分の研究内容を報告書に取りまとめるとともに、システム操作マニュアルを整備する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)消耗品費(素因データを蓄積する記憶媒体、誘因逆推定図等の各種出力結果を出力する上でのインクカートリッジ、専用用紙等) (2)国内旅費(学会発表旅費、論文投稿費等) (3)謝金(高分解能衛星データの処理、数値地形モデルから各種素因情報を作成する等、本研究を遂行する上でコンピュータ処理を要する。データ入力・処理の補助として学生への謝金) (4)その他(衛星データ、昨年同様、SARデータあるいは光学センサーデータ)
|