研究課題/領域番号 |
24651210
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
幸田 尚 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (60211893)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エピゲノム / ヒドロキシメチルシトシン |
研究概要 |
最近ゲノムDNAの修飾として注目を集めているシトシンのヒドロキシメチル化がある。しかし、現在修飾されていないシトシン(C)、メチルシトシン(mC)、ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を1塩基レベルで同定する手法は確立されていない。本研究ではこれまでメチルシトシンを1塩基レベルで同定するシークエンス法としてもっとも一般的に用いられてきたbisulfiteシークエンス法を応用して1塩基 レベルでC、mC、hmCを区別してシークエンスする新しい手法を開発することを目的としている。 C、mC、hmCを区別して同定する手法として、Dnmt1産物がhemi-methylated CpGの反対鎖のCを効率的にメチル化するが、hemi-hydroxymethylatedの場合はメチル化を行わないことを利用して、これらを区別する手法を検討した。具体的にはゲノムを適当な制限酵素で切断後、ヘアピンを形成する合成DNAを末端に結合し、これをプライ マーとして逆鎖に新たにDNAを合成する。その後、このDNAをDnmt1酵素で処理することによりメチル化を行うと 、元のDNA鎖がmCであれば対応する部分もメチル化されるが、hmCである場合はメチル化されない。処理後のDNA をbisulfite処理して全体をPCRで増幅し配列を決定すれば、元の配列と連結された逆鎖の対応部分のメチル化状態をあわせて解析することでC、mC、hmCを同定することが可能になるという原理である。 これまでにmC、hmCの修飾をもつモデル基質を用いて本法により実際に解析が可能であることを明らかにするとともに、その判別の精度を検定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
配列中のCpGのシトシンがC、mCあるいはhmCである合成基質を作成し、実際に本法を用いてシトシンの修飾状態を1塩基単位で同定できることを実際に示した。また、解析するDNA量を減らしてゲノムDNA 1 ug相当からも解析が可能であることも明らかになったことから、基本的な原理としてヒドロキシメチルシトシンの1塩基単位での同定が十分可能であることを示すことが出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本法はゲノム上の特定の部分のシトシンの修飾を解析することが可能であり、次世代シークエン サを用いることでwhole genome shotgun sequenceへの応用も可能である。 平成25年度は当初の計画通りES細胞などをモデルとして用い、全ゲノムのC、mC、hmCをゲノムワイドに同定することを試みる。また、そこから得られた結果と、これまでMeDIP法、hMeDIP法などの抗体を用いた手法による全ゲノム解析 の結果との比較を行う。 全ゲノム解析にあたっては、非常に多くのDNA断片を同時にhairpin構造としてPCR増幅する必要があり、通常のPCRより配列による増幅効率のバイアスが大きくなることが予想される。十分なcomplexityを保ったままbisulfite反応後 のゲノムDNAの増幅を行うよう、十分な検討を加え、実験手法の確立を目指す。 また、次世代シークエンサからのシークエンスリードについて、Dnmt1での修飾が行われたか否かを 判定するために合成したDNA部分がメチル化されているか否かでデータを採用するかどうかを判定するなどの処理が必要となる。これらを全ゲノムについて行うことは単純な作業ではあるが膨大な量の判定が必要であるため 、これを自動的に行うためのコンピュータ処理のパイプラインの構築を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、本法をゲノム全体のシトシンの修飾状態を網羅的に解析する手法へ応用するために、初年度に確立した手法を元にbisulfite反応したDNAを次世代シークエンサーを用いて解析する。このため、研究費の多くの部分は次世代シークエンサー用の試薬として使用することを計画している。
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