哺乳類ゲノムのエピジェネティックな調節においてDNAのメチル化は重要な役割を果たしている。最近、メチルシトシンがヒドロキシメチルシトシンへ酸化される反応が存在することが示され、脱メチル化の中間産物として注目されている。しかし、現在修飾されていないシトシン(C)、メチルシトシン(mC)、ヒドロキシメチルシトシン(hmC)を1塩基レベルで同定する手法は確立されていない。本研究ではこれまでメチルシトシンを1塩基レベルで同定するシークエンス法としてもっとも一般的に用いられてきたbisulfiteシークエンス法を応用して1塩基レベルでC、mC、hmCを区別してシークエンスする新しい手法を開発することを目的としている。C、mC、hmCを区別して同定する手法として、DNMT1産物がhemi-methylatedCpGの反対鎖のCを効率的にメチル化するが、hemi-hydroxymethylatedの場合はメチル化を行わないことを利用して、これらを区別する手法を検討した。具体的にはゲノムを適当な制限酵素で切断後、ヘアピンを形成する合成DNAを末端に結合し、これをプライマーとして逆鎖に新たにDNAを合成する。その後、このDNAをDNMT1酵素で処理することによりメチル化を行うと、元のDNA鎖がmCであれば対応する部分もメチル化されるが、hmCである場合はメチル化されない。処理後のDNAをbisulfite処理して全体をPCRで増幅し配列を決定すれば、元の配列と連結された逆鎖の対応部分のメチル化状態をあわせて解析することでC、mC、hmCを同定することが可能になるという原理である。 mC、hmCの修飾をもつモデル基質を用いて本法が有効であることを明らかにした上で、更にDNMT1酵素の反応条件の検討を詳細に行った。その結果、再現性よく98 %程度の精度でmCとhmCを同定できることを示した。 この手法は、単純な原理で効率よくhmCの解析が可能であることから、エピゲノム解析の新しい手法として、有力なツールになることが期待できる。
|