研究課題/領域番号 |
24651212
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
程 肇 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (00242115)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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キーワード | 概日リズム / 時計遺伝子 / 視交叉上核 / Period1 / poly(A) / 翻訳制御 |
研究概要 |
生物には概日リズムとよばれる、約24 時間周期の自律的な活動リズムが見られる。真核生物の概日リズム形成には、転写制御フィードバックループが一義的な機能を担うとされる。一方転写リズムがなくても、多数のタンパク質で発現概日リズムが見出され、タンパク質の時刻依存的濃度変化を構築する転写後制御機構(翻訳やタンパク質分解)も、概日振動ネットワークが機能するために重要であることが明らかとなった。真核生物の場合、mRNA の5’末端にあるCAP 構造、ならびに3’末端のpoly(A)は、転写された後にDNA 配列非依存的に付加され、翻訳反応の必須構造である。一般にmRNA のポリA鎖長は、同一遺伝子由来でも不均一な分布をもち、その長さ(平均値と分散)を簡便にかつ厳密に決定できる方法は今のところない。そこで従来からある低効率かつ結果がばらつきがちなポリA鎖決定法のAnchored RT-PCR 法を改良して、PACHINCO (Poly(A) Capture by Hairpin Chimeric Oligonucleotide)-RT-PCR 法を構築した。前年度に本方法を全自動型DNA分析用マイクロチップ電気泳動装置(Shimadzu社)に適用するための条件の最適化を実施した。その結果、実際にLarkによる哺乳類時計遺伝子Per1 mRNA のポリA鎖伸長を、明快に確認することができた。本年度は、さらにスループット性と、ポリA鎖長の分析精度を飛躍的に高めることを目的に、この方法を大規模シークエンサへ適用することを試みた。そして、シークエンサに対応させたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCR 法プライマーの開発、及びその反応と解析の条件検討を実施した。その結果、ラット視交叉上核由来細胞において、多数のポリA 鎖長に概日リズムが見られるmRNAを集積することができた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に立てた計画は以下である。 [1]シークエンサに対応させたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCR 法プライマーの開発、及びその反応と解析の条件検討。 [2]視交叉上核(SCN)及びSCN 由来細胞を用いたトランスクリプトーム解析の実施。 [3]視交叉上核(SCN)及びSCN 由来細胞を用いたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCR の実施。[4]トランスクリプトーム及びポリA 鎖長のデータ比較解析ツール及び統合データベースの構築。 [4]-①mRNA 発現レベルに概日リズムが見られる遺伝子の集積とそのプロモータ構造比較解析。[4]-②ポリA 鎖長に概日リズムが見られるmRNA の配列解析。[4]-③トランスクリプトームとPACHINCO-RT-PCR 法の結果を組み合わせた統合データベースの構築 この内、[1]、[3]、[4]-②については概ね順調に終了させることができ、シークエンサに対応させたゲノムワイドPACHINCO-RT-PCR 法プライマーの開発、及びその反応と解析の条件検討を実施した。その結果、ラット視交叉上核由来細胞において、多数のポリA 鎖長に概日リズムが見られるmRNAを集積することができた。しかし、本法を自動シークエンサへ対応後も、ポリA 鎖に概日リズムを有するmRNAの集積のために、計画で予想していた以上の期間が必要となった。そのため、視交叉上核細胞を用いたポリA鎖長に概日リズムが見られるmRNA の集積、及びその結果の使用を前提とした、PACHINCO-RT-PCR法による解析データとの統合データベース構築までいたらなかった。そのため、トランスクリプトーム及びそれらの結果を用いた統合データベースの構築を平成25年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の計画は以下である。 [1]ラットSCN 由来細胞を用いたトランスクリプトーム解析の実施。 [2]トランスクリプトーム及びポリA 鎖長のデータ比較解析ツール及び統合データベースの構築。 [2]-①mRNA 発現レベルに概日リズムが見られる遺伝子の集積とそのプロモータ構造比較解析。DNA マイクロアレイ法を用いて得られたマウスSCN 及びラットSCN 由来細胞のトランスクリプトーム解析の結果について、発現レベルに概日リズムが見られるmRNA を集積し、それらの発現リズム位相に基づいたクラスタリングを実施する。 [2]-②ポリA 鎖長に概日リズムが見られるmRNA の配列解析。上で構築したプログラムを用いて、全240000 データを解析し、ゲノムワイドmRNA ポリA 鎖長の経時的変化を取り込んだデータベースを作製する。このデータベースに基づき、ポリA 鎖長に概日リズムがみられるmRNA について位相差に基づいたクラスタリングする。 [2]-③トランスクリプトームとPACHINCO-RT-PCR 法の結果を組み合わせた統合データベースの構築。①と②で得られたデータベースを統合するとともに、それらを用いてこれらのmRNA 間にみられる相同性あるいは相違性について詳細に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
トランスクリプトーム、及びトランスクリプトームとPACHINCO-RT-PCR法の統合データベース構築。 ・消耗品費(計350 千円) 一般試薬(小計350 千円)(内訳:DNA チップ300 千円) ・その他(計150 千円) データベース構築(小計150 千円)
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