研究課題
多くの生物のゲノムには、コンピュータで予想したタンパク質の構造的特徴から膜輸送体をコードすると示唆される遺伝子が千を超えて存在する。しかし、分子機能との対応が明らかにされていないものも多く、解明が待たれている。本研究では、モデル植物シロイヌナズナの膜輸送体候補遺伝子群について、「機能株群集成長解析」という新たな手法を活用して、重金属、薬物、植物由来天然物といった有害物質の膜輸送と包括的に関連づけことを目的としている。本年度は、前年度作製したシロイヌナズナ膜輸送体1350種類の酵母遺伝子発現ライブラリとモデル有害物質をもちいた実験結果をもとに、機能株群集成長解析の手法に関するモデル化を進めた。また、宿主の生育に中立的な物質を輸送する膜輸送体についても機能株群集成長解析を適用するために、新たにな酵母順逆両選抜システムを開発した。関連の研究成果も合わせ、学会発表4回を行った。
3: やや遅れている
25年度には植物膜輸送体を発現させた酵母ライブラリの生育に有害物質が与える影響を評価し、成果発表する予定であった。しかし、24年度において、一部の植物膜輸送体遺伝子の取り扱いが予想以上に困難であったことから、酵母ライブラリの作出に手間取り、全体的に計画が1年程度遅延している。本年度は、本来前年度に行う予定であったモデル有害物質を用いたモデル化試験を行った。また、研究の過程であらたに植物細胞にとって中立的な物質の膜輸送に関しても機能株群集成長解析を適用する着想が得られたため、研究実施内容を修正した。結果として本来計画の遅れの一因となったが、本研究の一般性を広げる上で有益な研究成果が得られたと考えている。
平成26年度においては、本来25年度計画にあるモデル有害物質以外の化学物質による酵母ライブラリの群生育試験と、その統計解析、データベース化、論文・学会発表を次年度に行う。また、25年度に開発した酵母逆選抜システムをもちいて、中立的な物質についても追加の機能株群集成長解析をおこない、研究成果がより一般的であることを明らかにする。これらの目的で、研究費未使用額を繰り越したので、当初予定の実験を実施したり、成果発表をおこない、その経費に充てることとしたい。
25年度に、植物膜輸送体を発現させた酵母ライブラリの生育に有害物質が与える影響を評価し、成果発表する予定であった。しかし、24年度において、一部の植物膜輸送体遺伝子の取り扱いが予想以上に困難であったことから、酵母ライブラリの作出に手間取り、全体的に計画が1年程度遅延している。実験系のモデル試験(25年度)、有害物質群の評価(26年度)と計画を順次後倒ししたため、未使用額が生じた。このため、モデル有害物質以外の化学物質による酵母ライブラリの群生育試験と、その統計解析、データベース化、論文・学会発表を次年度に行うこととし、未使用額をその経費に充てることとしたい。当初予定の実験のための消耗品費、成果発表のための旅費、謝金、その他に用いる。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
FEBS Journal
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http://celld.agr.nagoya-u.ac.jp/nakanishi/130312paperNakanishi.html