発生過程や様々な生理条件では、集団細胞はゲノム情報が同じにも関わらず、1細胞間でRNAの発現量の不均一性が観察される。RNA量の不均一性の網羅的検出は、発生・分化や薬剤応答メカニズムの解明に有効であり、1細胞RNA-seq法の活用に注目が集まっている。本申請課題では、これまでに申請者が開発した1細胞Quartz-Seq法をベースに、定量性を更に向上させつつ、ハイスループット化した1細胞RNA-Seq法を確立することを目的としている。 1細胞RNA-seq法は大きく分けて、RNAを増幅可能な形に変換しcDNAを増幅するステップと増幅したcDNAをシーケンスライブラリDNAに変換するステップの2つにわかれる。本申請計画では、定量性及びスループットに関わる以下3点を検討項目としてあげた。1)cDNAの増幅を96穴PCRプレートを1単位として多数の1細胞を処理する方式の開発。2)cDNA増幅法の精緻化 3)cDNAからシーケンスライブラリDNAへの変換ステップの精緻化とハイスループット化。 昨年度は、2)1細胞レベルの逆転写効率をZip nucleic acidを活用し改善した。増幅産物をaRNAにするためPCR増幅とIVT増幅を組み合わせた増幅法の条件を決定した。3)aRNAから高効率にシーケンスライブラリDNAに変換する条件を決定した。今年度は、3)Tn5トランスポゼースを用いたシーケンスライブラリDNAに変換する条件を検討した。その結果、10-40 pg の増幅cDNAがシーケンスライブラリDNAへの変換に必要であることがわかった。これにより2)PCRによる増幅サイクルを6-8サイクル減少した。1)96穴用のPCRプレートの蓋と遠心機とミキサーを活用することで、シングルPCRチューブでの処理から、おおよそ100個の1細胞を1単位として大量に扱うことができるようになった。
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