研究課題
CIN85異常によるヒト多動症及びX染色体連鎖性精神遅滞の遺伝子解析と診断法の確立:CIN85遺伝子はヒトX染色体短腕 (Xp22.1-21.3)に存在しX染色体に連鎖した精神遅滞の原因遺伝子であるOligophrenin1(オリゴフレニン1)や細胞内のScaffold protein(足場タンパク質)であるPost-synaptic density-95 (PSD-95)と神経細胞樹状突起棘で共存していることを発見した。これはCIN85がX染色体にリンクした精神疾患の発症メカニズムに深く関与していることを示唆している。さらに、ドイツ ゲッチンゲン大学のShoukier 博士から提供された多動症及びX染色体連鎖性精神遅滞家系の患者のゲノムDNAからCIN85遺伝子領域約360.7 kbpの塩基配列を解読し、正常者の配列と比較・検討した。その結果、複数の男性患者の13番エクソンに31塩基の欠損を発見した。この欠損はアミノ酸翻訳のフレームを変化させ、他のタンパク質との結合に必要なProline-rich領域 (Pro-rich)のProline(プロリン)残基を消失させる。X染色体連鎖性精神遅滞(XLMR)の患者では、このProline-rich領域の機能消失が正常な脳機能、例えば他の分子との結合など、における細胞内情報伝達機構を撹乱し精神遅滞を発症させると考えられる。この結果は、本症の発症メカニズムを理解するうえで極めて重要な知見である。
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