平成24年度に行った実験より、Aluのサブクラスを特異的に増幅することは難しいことが分かった。サブクラス同士が非常に似た配列であり、かつグアニン・シトシン塩基の割合が多いためと思われた。PCRプライマーの設定を繰り返した。アニーリング温度を高めに設定すること、プライマーの解離温度を高めにすることを試みたが、最適な条件はいまだ決まっていない。 MAC-PCR法で見つかる新規Alu配列挿入の確認のために、Achレセプター遺伝子を含む染色体領域のPCR増幅を行い成功した。増幅断片は制限酵素にて切断を行い、レファレンス配列から予想される通りの断片長を得た。将来的に、新規挿入Aluが見つかった場合には、挿入の有無をこの方法で確認することができる。 新規挿入Aluとその周辺塩基配列が決定された場合には、その配列の染色体上の座位を決定し、データベースのものと比較する必要がある。Alu配列はハプロイドあたり100万個と大量にあるため、検出されるAluも多種多量となる。このデータ処理のため、コンピュータを購入し基準となるゲノムデータをダウンロードした。また、クラウドソフトのGalaxy(https://main.g2.bx.psu.edu/)を用いてデータベースからのAlu等、繰り返し配列の全ゲノム情報をダウンロードできようにした。 繰り返し配列の医学的な研究は世界的にも始まったばかりである。ゲノムの4割を占める繰り返し配列の進化的な意義が今後明らかになると、疾病と繰り返し配列の関連も分かってくる。繰り返し配列の挿入による遺伝子破壊だけでなく、ゲノム全体の制御を変化させる仕組みも疾病に関わることが明らかになるであろう。 今回の研究は研究者の転勤に伴い一旦終了するが、ここで得られたノウハウを用いて新規挿入Aluと疾患の関連性に関して引き続き別施設で研究を継続する予定である。
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