研究概要 |
本研究では,遺伝子機能を推定するために,配列情報ではなくネットワークの相同性を基準に,機能推定を試みている.ネットワークの比較方法として,当研究室で開発したネットワーク比較技術であるANGIE を発展させ,異種間のネットワークを比較することで,遺伝子機能の推定手法の構築を行なっている.本年は,ANGIEを直接種間比較に適用することで,機能比較がどこまで可能であるかを確認した.ショウジョウバエの近縁 6 種から得られたマイク ロアレイデータ[Kalinka et al. Nature 2010]に適用した. 非常に分岐年代が 近い近縁種である D. melanogaster と D. simulans を比較した場合,互いのネ ットワークが非常によく似ていて,保存性が高いことが示唆され,同時に,遺伝子機能も良く似ている事が分かる結果となった.更に,利用したデータ の中では 分岐年代が離れている D. melanogaster と D. virillis を比較したとこ ろ,特に成長因子関連のネットワークが大きく分断され,異 なる様子が示唆さ れた.ネットワーク上で分断されているにもかかわらず,既知の機能を調べると比較的似ているものが多かった.これは,発生速度の違いに由来する発現変化によるものであると考えられ,ネットワークを用いた機能推定に至るには,アルゴリズムの改良だけでなく,ネットワークを作成するデータにも十分注意する必要が有ることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,平成24年度に開発した手法を,より多くの実データに適用してトランスログの発見を行う.更に,既 知のホモログとの比較を行う.この比較により,多くのホモログがトランスログでもある可能性が高く,既存知識と合っている事の確認を行う. 同時に既存ホモログと大きく異なるトランスログを調べ,その機能,タンパク質ドメイン構造,制御領域の調査を行う. また,上記の研究において,必要なパラメータチューニング,アルゴリズムの改訂は適宜進めていく.
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