細胞の挙動の経時観察画像から、細胞の挙動を自動的に解析する細胞追跡手法を開発した。開発した手法は、大域データ対応付けをベースにしている。従来の大域データ対応付けでは、フレーム単位の対応付けにより短い細胞移動の軌跡であるトラックレットを生成し、細胞移動の仮説の尤度に基づきトラックレットの対応付けを行うことで、全体の軌跡を最適化していた。しかし、細胞移動の仮説の適切な尤度計算は難しく、トラックレット対応付けの間違いが生じる問題があった。本研究では、大域データ対応付けを一定フレーム領域でスライドしながら反復実行することにより細胞追跡精度の改善手法を開発した。実際に、濃度勾配に従い遊走する破骨細胞の観察画像に対して実験を行い、本手法により細胞追跡の精度が向上したことを確かめた。 さらに、顕微鏡によって得られた観察データを用いて外観から細胞の状態を判別する手法を開発した。従来は、動画像データからの細胞の状態判別には、あらかじめ正解の状態がわかっている画像を訓練データとして用いる教師あり学習の手法が広く用いられていたが、訓練データを十分な数だけ作成するのは非常に困難であった。そこで、本研究では教師あり学習の一つであるランダムフォレストを、訓練データとして正解が既知のデータと正解が未知のデータの両方を使う半教師付き学習に応用した手法を開発した。本手法は、分類器の判別結果の確信の度合いが高いデータを訓練データに追加する共訓練の手法をベースとした。実際の細胞画像で細胞分裂及び細胞死の状態判別を、本手法を用いて行った結果,正解の判別結果との一致の度合いを表すκ係数において、本手法は画像分類ソフトウェアであるwnd-charm,決定木,教師ありランダムフォレストの判別精度を上回った。また、本手法によって訓練データの追加を繰り返し行うことで偽陰性の値が減少する傾向が確認された。
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