動的な生命現象の動作原理を解析するためには、細胞内シグナル活性を操作することは有効である。しかしそれを安定的かつ定量的に制御することは困難である。我々はマウスにおいてNotchシグナル活性をGene dosage効果によって、遺伝学的に増強させたマウスを作製する。Notch1遺伝子を本来の遺伝子座で重複させるために、本来のNotchシグナルの時空間的制御を保ったまま、シグナルはエンハンスされる。我々のこれまでの研究で、体節周期を制御する遺伝子発現振動の周期が、Notchシグナル活性に依存して変化することが明らかになってきたが、本研究で作製する遺伝子改変マウスを使えばNotch活性を安定的かつ定量的に変化させることができるので、その相関を定量的に解析することができる。マウスNotch1遺伝子を重複させた遺伝子改変マウスの作製を開始した。Notch1遺伝子の上流の約13.5kbを遺伝子調節領域と考え、その上流にNeoカセットを伴ったLoxP配列を、ホモロガスコンビネーション法によって、ES細胞のゲノムに導入する。また、Notch1遺伝子の下流にPuromycine耐性遺伝子カセットを伴ったlocP配列を同様にES細胞に導入する。両変異が導入された日にCreレコンビナーゼを導入されたES細胞に発現させ、アリル間組み替えをおこさせる。現在変異ベクターを作製し、ホモロガスリコンビネーション法による遺伝子組み換え実験を試みたが、正しく組み替えが起こったES細胞クローンが現時点でとれていない。
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