研究課題/領域番号 |
24651231
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮崎 健太郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (60344123)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | メタゲノム / 16S rRNA / 機能相補 / リボソーム / DNAシャッフリング |
研究概要 |
リボソームは3つのrRNAと55の蛋白質から構成される精密な超分子複合体で、構成成分の変異や不和合は細胞死を招く。そのため、リボソームの各成分、とりわけ中心骨格を形成するrRNAは超保守的である。そのため、16Sr RNAは生物種固有の分子として、微生物の進化系統解析にも用いられてきた。これに対し我々は、大腸菌16S rRNA遺伝子の完全欠損株を宿主として異種16S rRNAによる生育相補性試験を行い、配列相同性が80%程度の異種16S rRNAが機能相補しうることを発見した。本課題では、メタゲノム由来16S rRNA及びDNAシャッフリングにより生み出される非天然型16S rRNAの機能性試験を行う。また同様の実験を23S rRNAにも拡張して行う。上記研究により、大腸菌リボソームの可塑性を徹底的に探り、変異情報などを体系化する。 平成24年度は、大腸菌16S rRNA遺伝子の完全欠損株(Δ7株)を相補しうる遺伝子をより徹底的に探索することを目的に、各種環境試料よりメタゲノムを調製し、16S rRNAをPCR増幅した。16S rRNAの発現ベクターに組み込み、Δ7株を形質転換した。ショ糖によるカウンターセレクションの有無により機能相補率を判定した結果、数千規模の相補株を取得した。中でも、とくに生育の遅い変異株に着目して分離し、大腸菌16S rRNA遺伝子との配列相同性が80%前後のものを数多く分離することに成功した。 いくつかの変異株の16S rRNAを配列、二次構造、立体構造の点で詳細に解析し、溶媒露出部位に位置する領域において、挿入、欠失を伴う大きな配列変化とともに、二次構造においても変化していることがわかった。さらに、相補した16S rRNAのDNAシャッフリングによるランダムな組換えにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各種環境試料より機能性16S rRNAを分離することを試み、数千規模の遺伝子を取得した。従来の相補遺伝子が数種類に留まっていることを考慮すると、リボソーム(16S rRNA)の機能可塑性の研究においてパラダイムシフトを起こすことができた。さらに、相補性16S rRNAのDNAシャッフリングにより、非天然の配列を生み出し、さらに相補性のスクリーニングにより、機能可塑性研究を更に推し進めることができた。DNAシャッフリングで得られた相補配列は自然界の試行錯誤の中で生まれ得た配列なのか、それらを宿した大腸菌の生育状態は天然型配列を宿したものと比較し生育に対し有利か否かなどとリボソームと細胞機能の点から新たな課題設定に対する糸口を得た。このように、当初の予定以上に明確に大きな進捗があった。
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今後の研究の推進方策 |
メタゲノムからの機能性16S rRNAのスクリーニングについては環境試料を変えながら粛々と進めていく。本手法は23S rRNAにも適用し、16S rRNAと同様の観点から研究を進める。 機能相補実験において特に重点的に進めるのはDNAシャッフリングにより得られた配列である。相補配列をクエリーとして既知配列DBを検索し、人工的に得られる配列が天然の進化でも同様の配列を生み出すのか、大腸菌を借りの宿主として機能性を評価し、フィットネスアドバンテージを与えるのか否かなどについて、徹底的に検証する。本研究により、「ありえた生命」に対し、一定の観点から議論することができると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に消耗品(遺伝子工学試薬、プラスチック製品類)の購入、論文発表、旅費に充当することを想定している。
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