研究課題/領域番号 |
24651236
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上田 実 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60265931)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ハエトリソウ / 分子プローブ |
研究概要 |
本年度は、ハエトリソウの閉葉物質の構造を基にした分子プローブの化学合成を中心に研究を進めた。 標的部位の同定に必要な蛍光プローブを合成するために、グリコン部位にアジド基を導入したアジ化体を合成し、Hüsgen[3+2]付加環化反応による蛍光基導入によって蛍光プローブ化合物を合成した。蛍光色素としてはフルオレセインを使用したが、状況に応じて他種の蛍光色素の導入も可能である。また、アジ化体にHüsgen[3+2]付加環化反応によってビオチンを導入したビオチン体は、ストレプトアビジンビーズ上に固定化することで、標的精製のためのアフィニティー担体として使用できる。 一方、標的タンパク質の非解離親和性標識を目指して光親和性標識化体を合成した。これには、グリコン部位、アグリコン部位、各々の光学活性体を連結することで、4種類のハイブリッド体を合成し、活性評価を行った。その結果、天然型のみに有意な活性が認められ、グリコン部位の立体化学も活性に重要であることが分かった。 閉葉物質は、ハエトリソウ・アメリカネムノキの2種の植物に対して葉を閉じさせる作用を示すことから、類似の機構の存在が推定される。生物検定には、アメリカネムノキ運動細胞を使用したが、アメリカネムノキの運動細胞における標的タンパク質の同定が進んでおり、今後は、この結果を基にハエトリソウにおける運動の誘導機構を再考察する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閉葉物質を基にした、蛍光プローブ分子、アフィニティー担体、光親和性プローブなどを全て合成することが出来た。また、研究に必要な閉葉物質並びに、そのコントロールとしての鏡像異性体の大量合成も完了した。類似の機構が予想されるアメリカネムノキの運動細胞において、標的タンパク質の同定が進んでおり、今後はこの結果を参照しつつハエトリソウにおける運動の誘導機構を再考察する。
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今後の研究の推進方策 |
閉葉物質は、ハエトリソウ・アメリカネムノキの2種の植物に対して葉を閉じさせる作用を示すことから、類似の機構の存在が推定される。アメリカネムノキの運動細胞における標的タンパク質の同定が進んでおり、今後は、この結果を基にハエトリソウにおける運動の誘導機構を再考察する必要がある。アメリカネムノキにおける標的分子ホモログがハエトリソウにも存在するか、また、その局在性などを調べていく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、植物材料の遺伝的解析にもやや重点を置いた研究が必要である。すなわち、アメリカネムノキにおける標的分子を確定した後に、そのホモログがハエトリソウにも存在するか、また、その局在性などを調べるための分子生物学的アプローチが必要である。このため、研究費の一部を分子生物学的研究に必要な鶴首し薬類に使用する。これと平行して、研究で使用する分子プローブ合成のための合成試薬類も購入する必要がある。研究費を効率的に使用することで、目的達成を目指したい。 次年度の使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額と併せ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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