研究課題/領域番号 |
24651237
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高橋 剛 群馬大学, 先端科学研究指導者育成ユニット, 准教授 (90345380)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リガンド探索 / ペプチドライゲーション |
研究概要 |
本研究では、溶液系での新規リガンド探索法の開発を目的としている。具体的な原理として、リガンド-タンパク質間相互作用により、リガンド側と標的側のそれぞれに担持したペプチド鎖間が共有結合を形成し、共有結合で生成したペプチド鎖と酵素再構成系をカップルさせ、分子間相互作用を酵素活性に変換する方法である。 H24年度は、本手法の基盤となる「リガンド-標的タンパク質間相互作用に依存したペプチド断片連結反応」と「生成したペプチド鎖を用いた酵素再構成系」の構築を試みた。ここでは、ペプチド断片間の連結反応として、ペプチド断片のC 末端のチオエステルとN 末端のシステインのSH 基がチオエステル交換反応およびS → N アシル基転移に基づくアミド結合生成反応を利用することとした。断片間の連結により生成するペプチド配列として、リボヌクレアーゼA(RNase A)のフラグメントであるS ペプチド配列を基にアナログペプチド1(KETAAACFERQHMDS)を設計した。アナログペプチド1を6-7残基間で切断した2種類のペプチド(Nフラグメント、Cフラグメント)それぞれに担持したリガンド-標的タンパク質間の相互作用により、フラグメント間が共有結合する系の構築を行った。 リガンド-標的タンパク質間相互作用のモデルとして、特異的に相互作用することが知られている(KVAALKE)3と(EVAALEK)3のコイルドコイルペプチドを用いた。実際に合成した化合物を用いてコイルドコイルペプチド間の相互作用に基づくフラグメントペプチド間の連結反応を検討したところ、相互作用と連結反応に顕著な相関が見られた。また、得られた生成物とリボヌクレアーゼA由来のSタンパク質の相互作用により、リボヌクレアーゼSが再構成し、ヌクレアーゼ活性を示すことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初に設定した課題である「リガンド-標的タンパク質間相互作用に依存したペプチド断片連結反応」と「生成したペプチド鎖を用いた酵素再構成系」の構築は、当初の計画通り概ね順調に進行している。1つ目の鍵となるペプチド断片間の連結反応は、ペプチド断片のC 末端のチオエステルとN 末端のシステインのSH 基がチオエステル交換反応およびS → N アシル基転移に基づくアミド結合生成反応を利用することで、低い副反応率でSペプチドアナログ1の配列が生成することなどを確認することができた。また、生成したSペプチドアナログ1が基のSペプチド配列と同様にSタンパク質と相互作用して、ヌクレアーゼ活性を示すことも確認することができた。以上から、本研究は順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の研究成果から、リガンド-標的タンパク質間相互作用のモデルとして用いた(KVAALKE)3と(EVAALEK)3のコイルドコイルペプチドの相互作用により、Sペプチドアナログ1のNフラグメントとCフラグメント間の連結反応が生じることが確認されている。そこで、H25年度は、種々の大きさ(分子量)のモデルタンパク質を選定し、モデルタンパク質に結合する既知のリガンドとタンパク質間の相互作用を本手法で検出できることを確認する。さらに、構築した反応系で得られたSペプチドアナログ1配列を含む生成物とSタンパク質との相互作用によりヌクレアーゼ活性が生じることを確認する。以上について、種々の実験条件で検討し、リガンドスクリーニング法として実際に利用可能な系の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究費使用計画として、実験で必要となるペプチドやタンパク質試料を調製するための各種試薬類、精製用HPLCカラム、ゲルろ過カラムなどを購入する。また、酵素活性測定のための蛍光測定用セルや各種ガラス器具類などの消耗品も順次購入し、円滑に研究を進める。
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