本研究では、溶液系での新規リガンド探索法の開発を目的とした。具体的な原理として、リガンド-タンパク質間相互作用により、リガンド側と標的側のそれぞれに担持したペプチド鎖間が共有結合を形成し、共有結合で生成したペプチド鎖と酵素再構成系をカップルさせ、分子間相互作用を酵素活性に変換する方法を考案した。 最初に、本手法の基盤となる「リガンド-標的タンパク質間相互作用に依存したペプチド断片連結反応」と「生成したペプチド鎖を用いた酵素再構成系」の構築を試みた。ここでは、ペプチド断片間の連結反応として、N断片C 末端チオエステルとC断片N末端CysのSH 基がチオエステル交換およびS → N アシル基転移によるアミド結合生成を利用することとした。断片間の連結により生成するペプチド配列として、リボヌクレアーゼAのフラグメントであるS ペプチド配列を基に2種類のアナログペプチドを設計した。各アナログペプチドとも2つに分断したペプチドを設計し、それぞれの断片ペプチドに担持したリガンド-標的タンパク質間の相互作用により、断片ペプチドが共有結合する系の構築を行った。 リガンド-標的タンパク質間相互作用のモデルとして、特異的に相互作用することが知られているコイルドコイルペプチドを用いた。合成した化合物を用いてコイルドコイルペプチド間の相互作用に基づく断片ペプチド間の連結反応を検討したところ、相互作用と連結反応に顕著な相関が見られた。アナログ2では、約2時間で、原料の30~40%の生成物が生じることが確認できた。また、得られた生成物とリボヌクレアーゼA由来のSタンパク質の相互作用により、リボヌクレアーゼSが再構成し、ヌクレアーゼ活性を示すことが確認され、酵素活性を指標として生成したペプチドの量を概算できることが分かった。これにより、溶液系での相互作用検出として本方法が利用可能であることが示唆された。
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