研究課題
多くの動物では、受精に先立ち、卵から放出される物質によって精子が誘引される。この精子誘引作用は多くの場合種特異的であると考えられる。しかしこの誘引物質の卵での合成・分泌経路は全く未知であるため、シグナル伝達系の普遍性と種特異性については全く不明である。 そこで本研究では、カタユウレイボヤ精子誘引物質SAAFの合成・分泌経路の解明を進め、さらに近縁他種の精子誘引物質を同定して比較することで、卵での精子誘引物質合成・分泌のメカニズムを解明すると同時に、種の多様性が生じるメカニズムについても迫ることを目標とする。26年度は、以下の2テーマについて解析を行った。(1)カタユウレイボヤ卵におけるSAAFの合成系路の解明:SAAF合成の最終過程である、硫酸転移酵素(Sulfotransferase, SULT)の発現とSAAF合成に関わる26年度は、すでにクローニングを行ったSULT2A1の解析を進めると同時に、カタユウレイボヤ卵巣で発現するSULTの網羅的な同定を試みた。その結果、24個あるSULTのうち、14個の遺伝子が卵巣で発現していることがPCRで確認された。これらの全ての遺伝子のクローニングを行い、in situ ハイブリダイゼーションを行ったところ、これまでに初期卵母細胞で高発現している6つのSULTを同定した。また、qPCRによる解析を行ったところ、初期卵母細胞もっとも発現量の高いSULTとして4つの遺伝子を同定した。(2)RNA-Seqデータ解析による、卵で特異的に発現するタンパク質の網羅的解析:SAAFはホヤ特異的な新奇の化合物であるため、SAAF合成酵素の同定は既知の酵素との相同性のみからでは同定出来ない。そこで、卵母細胞のRNA-Seqデータ解析を行い、網羅的な解析を試みた。 初期卵母細胞、成熟卵母細胞、未受精卵それぞれ100細胞程度からmRNAを抽出し、次世代シーケンサを用いてRNA-Seqを行った。現在、ステージで発現の差異のある遺伝子の網羅的同定を目指して解析を行っている。
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http://www.mmbs.s.u-tokyo.ac.jp/research/Yoshida/index.html