研究課題
生体分子間に働く疎水的相互作用を説明するための仮説「協奏的な分子運動は生体分子間に親和性をも生む」を検証した。生命現象を司る弱い相互作用を解明するために、実験科学的アプローチによって、複雑な構造を有する生体分子に特有な分子運動とそれに起因する分子間相互作用の機構を精査した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、生命現象を司る分子間相互作用が分子の協奏的動きによって可能となること実験的に示すことを目的とした。具体的には、構成分子の有意な2つの立体配座を結晶X線回折と分子動力学計算によって明らかにし、生体分子に働く弱い分子間相互作用を精査した。研究対象としては、脂肪酸と脂肪酸結合タンパク質(FABP)を取り上げ、複合体形成時の分子間相互作用を解析し、脂肪酸自体の特性を理解した。
今後は、膜タンパク質のモデル系として膜貫通性ペプチドとそれを取り巻く脂質分子間の相互作用を取り上げる。次年度では下記の3つのアプローチによって目的達成の可能性を評価し、膜タンパク質モデリングのためのパラメータの取得を試みる。・NMR, IRスペクトルによる動的相互作用解析・膜タンパク質モデリングのためのパラメータの取得・分子動力学計算によるモデル系の創出
・NMR, IRスペクトルによる動的相互作用解析:前年度に引き続いて可溶性タンパク質系で検討を進める。脂肪酸結合タンパク質(FABP3)と脂肪酸の複合体のNMRとIRスペクトル測定にために、標識脂肪酸を調製する。このために試薬等の消耗品を購入する。・膜タンパク質モデリングのためのパラメータの取得: 熱測定(ITC)を用いて、自由エネルギー変化を評価する。これによって脂質アルキル鎖とアミノ酸側鎖の協奏的動きによる安定化を加味した、疎水性アミノ側鎖の配置に依存的なパラメータの設定を行う。実験に必要な膜タンパク質の調製のために、細菌培養用の消耗品を購入する。・分子動力学計算によるモデル系の創出:計算実験に必要な、メモリ媒体、プリンター用品など少額の消耗品を購入する。
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