研究課題
本萌芽研究では、生命現象を司る分子間相互作用が分子の協奏的動きによって可能となること実験的に示すことを目指した。具体的には、構成分子の有意な2つの立体配座を明らかにし、それらの関わる二分子間の親和性を生む分子の動きを実験的に捉えるために、脂肪酸と脂肪酸結合タンパク質(FABP)に着目した。共同研究者とともに、これらの共結晶を、脂肪酸の種類を変えて作成し、高分解の構造解析に成功した。その結果、当初の仮説通り、炭素数が14より長いアルキル鎖では、顕著な電子密度の低下と温度因子の上昇が認められた。また、共同研究者とともに、ステアリン酸結合体について室温での結晶構造解析を行い、炭素鎖12位以降の配座が一定でないことが明らかになった。これは、当初の予想どおり、速い配座交換によっても分子の結合が安定に保たれていることを示唆しており、今後の研究展開に役立つ有力な知見を得られたと考えている。次いで、共同研究者とともに膜タンパク質のモデル系として膜貫通性ペプチドとそれを取り巻く脂質分子間の相互作用に着目し、膜タンパク質モデリングのためのパラメータの取得を試みた。脂質などの疎水性分子と膜タンパク質の相互作用を動的な側面から解明できれば、比較的不明瞭な概念であった「疎水性相互作用」という概念をより正確かつ定量的に扱う研究の端緒を見出したと考えている。これらを用いれば、膜タンパク質の構造決定にも有用な計算機による分子モデリングに有用なパラメータを得ることができ、構造生物学の発展に資することができる。ひいては、新しい生体分子複合体のサイエンスが発展する契機となるように、他の資金を用いて今後も研究を継続する予定である。
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