研究概要 |
マンノースレセプターとは,D-マンノースを特異的に認識する分子の総称である.近年,マンノースレセプターは,極めてユニークな抗 HIV 活性を示すことが明らかにされたが,既存のマンノースレセプターは医薬のリードとして適していないため,新規抗 HIV 薬の開発研究は停滞している.本研究では,L-ラムノースが 6-デオキシ-D-マンノースの鏡像体であることに着目し,全く新しいマンノースレセプターとして,ナマズ由来ラムノース結合性タンパク質 (SAL) のラムノース結合ドメインの「鏡像体」を合成することを目的とした. SAL は 95 残基からなる 3 つのラムノース結合ドメイン (SAL-D1, D2, D3) を有する.昨年度は合成上の観点から「鏡像体」合成の候補ドメインとして SAL-D2 を選定し,その C 末端 47 残基のペプチドを合成した.そこで本年度は,本ペプチドを基にして,native chemical ligation によるフラグメントカップリング法で SAL-D2 に導く合成計画を立てた.SAL-D2 の N 末端 48 残基を 4 つのフラグメントに分割し,6, 8, 20, 14残基からなるペプチドチオエステルの合成を行なった.その後,native chemical ligation によるフラグメントカップリングを行ない,得られた SAL-D2 が L-マンノースを結合するかどうかを等温滴定カロリメトリー (ITC) で評価する予定であったが,超高感度等温滴定型カロリメーターが長期に渡って故障したため,研究は中断状態にある.
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