研究課題/領域番号 |
24651251
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
開 俊樹 自治医科大学, 医学部, 助教 (20608492)
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研究分担者 |
臼井 けい子 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (40608494)
坪内 泰志 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (30442990)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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キーワード | メタン生合成 |
研究概要 |
平成24年度当初の研究実施計画では、次の3つの事が予定されていた。① メタン生成アーキアからの、メタン生成遺伝子群のクローニング ② Saccharomyces cerevisiaeへのインテグレーション ③ インテグレーションした遺伝子群の発現および機能チェック 。このうち、平成24年度末段階で①と②が進行中であり、③に関しては研究期間を1年延長して実施する予定である。 メタン生合成に関係する遺伝子はおよそ200余りが特定されているが、そのうちで生合成に直接関わる遺伝子、補酵素の合成に関わる遺伝子、モリブデンやタングステンの特殊な重金属トランスポーター関連遺伝子を、Methanothermobacter thermautotrophicus のゲノムから91個クローニングした。このうち6個はクローニングが出来ず、KEGG PATHWAY(http://www.genome.jp/kegg/keg g2.html)の遺伝子情報を元に全合成を行った。この作業は当該研究の基礎であり、非常に重要である。 これらの遺伝子は順次Saccharomyces cerevisiaeの染色体に5-FOA法を用いて導入を行っている。染色体へのインテグレーションは各メタン合成機能を司る遺伝子群で並行して行っている。インテグレーションの位置はSaccharomyces GENOME DATABASE (http://www.yeastgenome.org/) の情報を元に、検討されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究全体の遅延に関する主な要因は、当該研究課題申請時には想定されていなかった研究代表者の移籍によって(平成24年5月)研究環境が変化し、当該研究の為の環境整備に時間がかかった事が原因である。この事態は既に収束に向かっている。 現在までに実施された研究で、遂行に想定外の遅延をもたらした問題点は2つある。一つ目は、メタン生合成関連遺伝子のクローニングが想定外に困難であったという点である。データベースを元にプライマーを作成し、現在販売されている中でも高正確性と評判のDNAポリメラーゼを用いてメタン生合成関連遺伝子のクローニングを行っているのだが、クローニングされた遺伝子全体の約60%にアミノ酸変異を伴った遺伝子変異が存在し、約5%はクローニング自体不能であった。変異遺伝子は修正にさらなる時間を費やす為、全体の実験が遅れる要因の一つになっている。限られた予算の中で、データベースを元に全ての遺伝子を全合成する事は現実的でなく、クローニング出来ない遺伝子をどう扱うかが課題になっている。 2つ目は、Saccharomyces cerevisiaeへのインテグレーションが、予想以上に時間がかかる点である。現在採用している形質転換法である5-FOA法は、出芽酵母の染色体に外来遺伝子を導入する際の一般的な方法である。その過程は、エレクトロポレーションによる外来遺伝の形質転換とウラシル合成遺伝子の除去及びそれぞれのステップでの遺伝子確認で、1サイクル3週間ほどの時間がかかってしまう。これは外来遺伝子の毒性や、置換した遺伝子の重要性などで生育時間が変化する事が原因で、時間短縮が可能か見極めが困難である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、当初予定していた研究実施計画のうちの、② Saccharomyces cerevisiaeへのインテグレーション ③ インテグレーションした遺伝子群の発現および機能チェック を行う予定である。 Saccharomyces cerevisiaeへのインテグレーションに想定外の時間がかかっているため、Saccharomyces GENOME DATABASEの情報を再度検討し、独立した16本ある染色体別々に、メタン生合成の各ステップを行う遺伝子群を並行して導入し、機能チェックを行った上で出芽酵母の2倍体作成を行い、時間を短縮する予定である。 クローニング不能な遺伝子に関しては、Saccharomyces cerevisiaeへのインテグレーションを限界まで後回しにして、PCR法でのクローニングが可能かを検討し、予算の圧縮を行う予定である。 発現機能チェックはウエスタンブロッド法で行う事を基本としているが、もし発現が確認出来なければRT-PCR法を用いて、mRNAの発現量チェックを行う予定である。メタン生合成反応の個別反応の過程が正常に機能しているかの確認は、薄層クロマトグラフィーでの生成物質の同定で行う予定であるが、場合によっては低分子の質量分析及びメタボローム解析を行う可能性も考慮している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、遺伝子のクローニング及び全合成に、平成24年度と同額の70万円、嫌気培養と発現機能解析用の試薬購入費に50万円、旅費に10万円、論文校閲料30万円、投稿費用20万円と予定している。 遺伝子のクローニングにかかる費用を本年と同額計上したのは、特定されているメタン関連遺伝子が2011年段階で約200個と発表されているからである (More than 200 genes required for methane formation from H2; and CO2; and energy conservation are present in Methanothermobacter marburgensis and Methanothermobacter thermautotrophicus. Archaea Volume 2011, Article ID 973848, 23 pages)。現在までの研究で、Saccharomyces cerevisiaeに存在する遺伝子で補完出来ないと考えられるメタン生合成に中心的な役割を果たす遺伝子91個のクローニングが終了しているが、終了分の遺伝子と同じ規模の遺伝子が最大必要になる可能性を考慮した。 嫌気培養と発現機能解析用の試薬購入費は、当該研究申請時と同額を確保している。現在の研究経過過程で増減を再考する新しい知見は無い。 旅費、論文校閲料、論文投稿料も、当該研究申請時と同額を確保している。発表する学会も当該研究申請時と同様に日本農芸化学会年会、及び酵母遺伝学フォーラムを予定しているが、研究経過によっては酵母遺伝学フォーラムに関して変更の可能性がある。
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