研究課題/領域番号 |
24651252
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研究機関 | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
研究代表者 |
鎌田 春彦 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, サブプロジェクトリーダー (00324509)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プロテオミクス |
研究概要 |
臓器は多種類の細胞から構成される三次元構造を持った複雑な構造体であり、各細胞が有機的に相互作用することで高次機能を発揮している。しかし、どのような機構でその構造を保ちながら機能を発揮しているのかに関して、詳細なメカニズムは未だ不明な部分が多い。 そこで本研究では、高次組織構造を持つ臓器の構築を司る分子を同定・機能解析することを目的に、組織由来のスフェロイド(CTOS)に対してプロテオミクス等の網羅的解析を実施した。平成24年度ではまず、手術摘出組織、生検組織を機械的・化学的に処理し、直径が数十から数百マイクロメーターの組織細胞塊(スフェロイド/オルガノイド)を回収することでCTOSを作製することができた。このCTOS をスフェロイド培養から平面培養へと展開可能な細胞を作製した。組織由来の単分散した細胞は、組織由来の細胞の中でも、間質細胞が多く存在し、培地シャーレに比較的多数接着するために、組織由来の実質細胞の回収が困難であることが明らかになった。そこで、上記CTOSを一旦作製した後、培地の組成を幹細胞培地から一般的な培地X(特許出願予定)に置換することで、効率よく平面培養に展開することが可能であることを見出した。現在、このCTOS に発現するタンパク質と平面培養された細胞にそれぞれ発現する膜タンパク質に着目したプロテオーム解析を実施するために、膜タンパク質を濃縮し、抽出したタンパク質の定性・定量的なプロテオーム解析を実施しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTOSを回収するところまでは順調に進めることが出来たが、その後の細胞の平面培養に関して、CTOSに含まれる細胞群と単分散した細胞を接着させたものの細胞ポピュレーションに違いがあることに気付き、どのように細胞を回収するべきか、検討を続けていた。その後、培地の組成を替えることで効率良く接着細胞を作製出来ることが判明したが、それまでに時間を要した。今後、より研究を加速させ、目的を達成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに実施した研究材料を活用して、組織デザインに関わる分子の同定を目指す。昨年度の遅れを取り戻すために、回収されたタンパク質のプロテオーム解析を積極的に実施し、タンパク質の同定を急ぐ予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
<CTOS 移植モデル動物のin vivo biotinylation>CTOS はヒトのがん組織由来の腫瘍細胞をスフェロイド状に培養したものであり、SCID 等の免疫不全マウスに移植可能である。そこで、ヒトのがん組織に発現する3次元構造の形成に関わる分子を直接組織から回収することを目的に、CTOS 移植マウスに対してin vivo biotinylation 法を実施し、間質組織に存在する三次元構造の維持に関連する分子群を効率良く精製・同定する。 <CTOS とCTOS 由来平面培養細胞株のプロテオミクス解析>平成24年度までにスクリーニングした平面培養可能CTOSを利用して、その細胞培養形態によって異なる分子の発現を、プロテオーム解析を駆使して解析する。これには、申請者独自の抗体プロテオミクス技術を実施し、僅かな発現しか見られない微量抗原に対する抗体を用いて効率良くスクリーニングを行う予定である。 <同定されたタンパク質の機能解析に向けた基礎検討>上記検討により明らかになった分子群を対象として、その機能解析を行う。具体的には、遺伝子強制発現細胞を用いて、その三次元組織構築能に違いが出るかどうかを確認するとともに、siRNA 等を用いて、組織構造の維持に関与する割合を解析し、これまでにない新たな機能分子の探索を順次行う予定である。
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