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2012 年度 実施状況報告書

生体高分子を鋳型とした大環状リガンド創製と分子進化

研究課題

研究課題/領域番号 24651253
研究機関北海道大学

研究代表者

大栗 博毅  北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80311546)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード多様性指向有機合成 / テンプレート合成 / ユニット集積化 / マクロ環化 / 機能性低分子
研究概要

生体高分子表面を鋳型として大環状骨格を構築するアプローチで、標的ドメインに特異的に相互作用する人工リガンドを合理的に創製する。蛋白質間や蛋白質―核酸間相互作用を変調・制御する機能性サブドメインとして必要な分子表面積を獲得しながら、大環状天然物群と同等の細胞膜透過性を兼ね備えた化合物群を創出する。生理的条件下での共有結合形成反応として、Native chemical ligation や Click反応が現在多用されているが、本研究では、これらとは異なる結合形成反応や機能性ユニット集積化法を開発している。
まず、トリプトファン残基から一工程で変換可能なピロリジノインドリンを活用した二量化反応を検討した。既存の手法では、アセトン溶媒中化学量論量以上のコバルト錯体を使用する必要があったが、本研究ではニッケル触媒を用いた反応系を開発した。最近、基質の脱離基となるハロゲンの種類や配位子を最適化し、含水アミド系溶媒中でピロリジノインドリン骨格同士を高収率で二量化する独自の手法の開発に成功した(投稿準備中)。
上記と並行して、アズレノンに潜在する多彩な化学反応性を引き出しながら、複数のユニットを生理的条件下で集積化するアプローチを開発している。筆者らが2010年に開発した鎖状/環状アゾ化合物を順次作用させるワンポット反応を展開し、2種類のペプチド性ユニットの連結を検討中である。更に、アズレノン誘導体の位置・立体選択的な光二量化反応や[3+2]双極子付加型環化によるN末端ペプチドユニットとC末端をアルデヒドとしたユニットとを連結するモデル反応系の開発に成功し、速報論文を公表した(Chem. Commun. 2013)。今後、二量体型天然物類似化合物群の構築やヘリックスやβーシート等の機能性ユニット集積化への応用を鋭意検討予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

多官能性天然物類似リガンドの構造多様化と生体直交性の高い骨格形成反応の開発については、独自性の高いアプローチによる基盤的な成果が着実に蓄積されてきている。複数の機能性ユニットを連結する合成プロセスの開発については、速報論文を公表することができた(Chem. Commun. 2013)。またトリプトファン誘導体を触媒的に二量化するアプローチの速報論文も数ヶ月以内に投稿できる目処がついてきた。これらの検討で得られた多官能性scaffold群は、ペプチドと同程度の水溶性を確保している。また、骨格に提示した複数の官能基を利用して、標的生体高分子を特異的に認識可能な機能性ユニットを簡便に連結できる。更に、機能性ユニットの導入位置を改変することで、ユニット同士の空間配置のバリエーションを創出することができるように設計されている。
一方で、任意の核酸や蛋白質に結合する大環状分子を生理的条件下で創製するアプローチの概念実証については、検討が遅れており今後の課題となっている。生体分子表面をテンプレートとして環化前駆体をフォールディングさせ、官能基同士の近接効果によりマクロ環形成反応を促進させる戦略を具現化すべく鋭意検討中である。

今後の研究の推進方策

(1)実効性が期待されるアプローチとして、DNA結合性の抗生物質の生合成を踏まえた戦略で、二量体型マクロ環骨格を生理的条件下で確実に構築する。チオエステル交換により単量体を二量化させながら、動的な平衡状態にある環化前駆体群を発生させる。エントロピー障害のため通常は殆ど進行しないマクロ環形成反応を生体高分子テンプレートの添加により実現する。
(2)より拡張性に優れたアプローチとして、最近我々が合成したScaffold群を活用して機能性ユニットを集積化し、マクロ環化前駆体のバリエーションを創出する。次に、ユニット集積化や環形成を簡便かつ確実に実現する結合形成反応を選別するとともに、基質の置換基や立体化学を最適化し、所望の結合親和性を獲得した人工リガンドを合理的に創出するテンプレート合成法の実現を目指す。

次年度の研究費の使用計画

所望の生体高分子表面へ高い結合特異性・親和性で結合する大環状人工リガンドを合理的に設計・合成するため、分子設計ソフトウェアのライセンスを購入する。
核酸やタンパク質テンプレートを入手するとともに、人工リガンドや機能性ユニットの合成に必要な有機合成関連器具の補充と試薬溶媒等の消耗品の購入に充てる。
本研究の成果発表と最先端の研究動向調査のため、学会参加費・旅費が必要である。
その他の費用として、分子構造解析・分子間相互作用解析のための機器使用料(本学オープンファシリティー)や英文校正費、プリンター関連消耗品の購入等に充てる計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Sequential [6+2], [2+2], and [3+2] annulations for rapid assembly of multiple fragments2013

    • 著者名/発表者名
      Velisoju Mahendar, Hideaki Oikawa and Hiroki Oguri
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 49 ページ: 2299-2301

    • DOI

      DOI: 10.1039/C2CC38854E

    • 査読あり
  • [学会発表] 逐次的環構築によるフラグメント集積法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      大栗博毅、Velisoju Mahendar、上田拓真、及川英秋
    • 学会等名
      日本ケミカルバオロジー学会第8回年会
    • 発表場所
      東京(東京医科歯科大学)
    • 年月日
      20130619-20130621
  • [備考] 北海道大学大学院理学研究院化学部門有機反応論研究室

    • URL

      http://barato.sci.hokudai.ac.jp/~yuhan/member/index.html

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公開日: 2014-07-24  

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