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2012 年度 実施状況報告書

低酸素応答性発光プローブ イリジウム錯体によるミトコンドリア呼吸鎖機能の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24651256
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関群馬大学

研究代表者

竹内 利行  群馬大学, その他部局等, 特任教授 (00109977)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードバイオテクノロジー / 生体機能利用
研究概要

生体のエネルギー産生は、ミトコンドリア呼吸鎖の電子伝達反応でまかなわれ、この反応に肺から摂取した酸素の90%以上が消費される。電子伝達系では4つの複合体が電子をリレーして複合体IVにO2が渡されてH2Oとなり、その過程で0.1-2%のO2が電子対とならず、反応性に富む活性酸素(ROS)となる。従って、激しい運動などで多量の酸素を消費すると多量のROSを生ずる。ところで、ROSはその基となる酸素が十分にある状態よりも低酸素状態の時の方が多量に発生する。そこで我々は、「ミトコンドリアでROSは酸素消費に応じて発生するはずだが、低酸素状態でROS発生が高まるのはなぜか」と云う問いを立てた。
我々はこれまで赤色発光イリジウム錯体Ir(btp)2(acac) {BTP; bis(2-(2’benzothyenyl)pyridinato-N,C3’)iridium(acetylacetonate)} (分子量 712)を基本型として用いてきた。BTPは脂溶性で細胞内ではEndoplasmic reticulum (ER) に局在する。そこで24年度は、ミトコンドリア局在性をもつBTP誘導体を合成した。BTPは光学特性に関わる2つの主配位子とプローブの光学特性には関わらず、水や脂質の親和性のみを変える補助配位子acetylacetone (acac)から成る。BTPをミトコンドリアに局在させるために、acacにミトコンドリア指向性triphenylphostin (TPP) をつけ、BTP-TPPを培養細胞に取り込ませて細胞内局在を調べたところ、ミトコンドリアマーカーMitotrackerと一致する画像を得た。更にミトコンドリアの多い細胞と少ない細胞で比較するとBTP-TPP発光はミトコンドリア数と比例して発光した。25年度は本BTP-TPPを用いてROS発生との関連を調べる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

24年度当初は発光イリジウム錯体Ir(btp)2(acac) {BTP; bis(2-(2’benzothyenyl)pyridinato-N,C3’)iridium(acetylacetonate)} をミトコンドリアに局在させるために、光学特性には関わらず、水や脂質の親和性のみを変える補助配位子acetylacetone (acac)にCH2Clをつけ、Arginine (Arg)を付加してミトコンドリア局在を行なおうとした。ミトコンドリア膜はネガティブに荷電しており、Argは3つのアミノ基をもつのでプラスに荷電するBTP-Argは酸性荷電を持つミトコンドリアに非常に取り込まれやすく、CH2Clはミトコンドリア内膜タンパク質の-SH基と反応してトラップされると考えた。しかし、実際は予想したような取り込みが得られず、そこで上記のようにtriphnylphostin (TPP)を付加する方法に切り替えた。BTP-TPPは非常によくミトコンドリアにとりこまれ、これで第一の目的は達成され、次の培養細胞実験、さらに動物実験へ進める基盤が確立された。

今後の研究の推進方策

グルコース応答性を保つマウス膵β細胞株MIN6と、波打つ収縮・弛緩を観察できるラット心筋初代培養細胞を用いる。共にミトコンドリアに富む細胞で、本研究に適していると判断した。MIN6は我々の研究室で常時用いている細胞で、低グルコース、低酸素、サイトカイン刺激で大量のROS発生を観察できる(Endocrinology 151: 4705, 2010)。ROS検出は5 μlの5-(and-6-)-chloromethyl-2’,7’-dichlorodihydrofluorescein diacetate (CM-H2DCFDA)を5分間インキュベートして作り出されるDCFをSenSysTM charge付きLSM5 PASCALコンフォーカル顕微鏡(Carl Zeiss)で定量して数値化する。DCFは安定しないので定量が難しく、その点でPF-H2TMRos (Invitrogen) は非常に優れており、緑色発光プローブもある。ミトコンドリアの同定にはMitoTrackerを用いる。
心筋初代培養は、以前心筋肥大の実験で用いたことがあり(JBC 272: 20545, 1997)、心筋細胞の機能不全状態である心筋肥大技術ももっている。心筋の運動量増加はβアゴニスト10 μM isoproterenol、100 μM carbachol で、ブロックはβブロッカー propanolで行なう。

次年度の研究費の使用計画

物品費 700,000円 旅費 300,000円 謝金 100,000円 計 1,100,000円 使用予定。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Ratiometric molecular Sensor for monitoring oxygen levels in living cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshihara T, Yamaguchi Y, Hosaka M, Takeuchi T, Tobita S.
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 51 ページ: 4148-4151

    • DOI

      DOI: 10.1002/anie.201107557

    • 査読あり
  • [学会発表] Phosphorescence imaging of tumor using iridium complexes.2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshihara T, Hosaka M, Takeuchi T, Tobita S.
    • 学会等名
      14th International Congress of Histochemistry and Cytochemistry
    • 発表場所
      Kyoto, Japan
    • 年月日
      20120826-20120829
    • 招待講演
  • [学会発表] Phosphorescent iridium complexes with high cellular uptake efficiency for intracellular and in vivo oxygen measurements.2012

    • 著者名/発表者名
      Tobita S, Yoshihara T, Ichikawa K, Murayama S, Hosaka M, Takeuchi T.
    • 学会等名
      XXIV IUPAC Symposium on Photochemistry
    • 発表場所
      Coimba Portugal
    • 年月日
      20120715-20120720

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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