研究課題
生体は、ミトコンドリア電子伝達系で酸素を消費しながら大部分のエネルギー源ATPを産生する。この際消費酸素の0.1~2.0%が反応性に富む活性酸素(ROS)となる。従って、激しい運動時には酸素消費量に応じてROSも多量に産生される。ところでROSは酸素が十分にある時よりも低酸素状態の方が多量に産生されると云う。本研究は、酸素消費の盛んな心筋細胞を用いてその理由を問う。我々は、赤色発光イリジウム錯体BTPで低酸素状態を評価している。BTPは脂溶性で、細胞内では小胞体ERに局在する。本研究では、BTPにミトコンドリア指向性triphenyl phostin(TPP)を付けたBTP-TPPを用いてミトコンドリアが多い細胞と少ない細胞で発光強度を比較した。BTP-TPPはミトコンドリア数に応じて発光強度が増した。次に、ラット心筋初代培養細胞を用い、βアゴニスト10μM isoproterenolの添加群と、βブロッカー propranololを加えてβアゴニスト作用抑制群を比較すると、発光はβアゴニスト添加で明らかに増加し、βブロッカーで抑制された。ところが、心筋初代培養系は自発的に収縮波動が観察されるが、BTP-TPPを加えると収縮波動が減弱してくる。つまり、このプローブがミトコンドリア内外膜間の電位差を消失させる可能性が生じた。そこで、従来のBTPよりも102オーダーの低濃度で発光するBTP-DMを用いて、同様の実験結果を得た。次に、ROS発生を緑色蛍光プローブRF-TMROSを用いて観察すると、予想通り、BTP-DMの赤色発光に応じてRF-TMROSの緑色発光が強くなった。しかし、活性グルタチオンGSHを添加すると低酸素になっても緑色発光は弱いままに留まる。低酸素状態でROS産生が増加するのはGSH-peroxidase系のROS消去活性が弱まるためと推測された。
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