研究課題/領域番号 |
24651259
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水上 進 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30420433)
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キーワード | リポソーム / 抗菌ペプチド / 酵素活性 / セラノスティクス |
研究概要 |
細菌の細胞膜を破壊する抗菌ペプチドの一つであるtemporin L(TL)に着目し、酵素活性に応答して薬物放出するシステムの開発を行った。以前の研究で、TLのLysのε-アミノ基を保護することで、細菌膜傷害活性が大きく抑制されることを見出しており、この原理を応用した。昨年度は、TLにプロテアーゼの基質ペプチドを連結し多機能性ペプチドを設計・合成し、プロテアーゼ活性に応答して化合物をリポソームから放出するシステムを開発した。また、TL中のアミノ酸の一つをリン酸化アミノ酸で置換することで、膜傷害能が変化することを見出した。そこで、本年度はリン酸化アミノ酸の導入位置が、膜傷害活性変化および酵素による認識に与える影響を考察した。その結果、13残基からなるTLのペプチド配列中の中央部にリン酸基を導入することで、顕著な膜傷害性の低下が観察された。また、アルカリホスファターゼ、セリン/スレオニンホスファターゼ(PP1)、チロシンホスファターゼ(PTP1B)の三種のリン酸化酵素に対する応答を調べた結果、ほぼすべてのリン酸化ペプチドがアルカリホスファターゼの基質となった一方で、PP1、PTP1Bに関しては基質選択性が見られた。また、これらの酵素と基質となったリン酸化TL誘導体をリポソーム存在下で混合したところ、酵素反応の進行に伴って、リポソーム内部からの化合物放出が観察された。以上より、ホスファターゼ活性によって薬物を放出するシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の主目的であったリン酸化酵素による薬物放出に成功した。ペプチドとリポソームの一体化については、次年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチドとリポソームの一体化についての検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に脱リン酸化酵素活性を標的とする機能性薬物放出システムを開発する予定であったが、進捗の遅れにより25年度に行った。その為、平成25年度に行う予定であった機能性ペプチド一体型リポソームの開発を次年度に行うことにしたため、予算の一部を次年度に繰り越した。 次年度に繰り越した予算は、研究遂行の為の有機合成化学および生化学用試薬の購入、学会発表の為の旅費に使用する予定である。
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