本研究では分子インプリンティングとポストインプリンティング修飾を組合せた新規タンパク質認識材料合成法により、標的タンパク質認識空間のみにレポーター分子を導入した蛍光性センシング材料を基板上に構築することを目的とした。前年度はジスルフィド結合及びタンパク質固定化のための官能基としてカルボキシ基を有するシランカップリング剤型のリンカー分子の合成を行った。また本リンカー分子の類似化合物を合成し、タンパク質と相互作用させ、その二次構造に大きな影響を与えないことを円二色性スペクトル測定から確認した。 本年度は基板上に固定化したタンパク質のインプリンティング条件に関して詳細な検討を行った。金基板上に鋳型タンパク質固定化用のリガンドおよびATRP法の重合開始基であるブロモ基を固定化した。この基板上に、固定化リガンドを介して標的タンパク質を固定化した後、膜厚の異なるポリマー薄膜を作製し、鋳型タンパク質を除去することで、分子インプリントポリマーを得た。鋳型タンパク質と参照タンパク質の識別能を指標として分子認識能を検証したところ、膜厚約15 nmのポリマー薄膜が最も高い選択性を示すことが明らかとなった。 またポストインプリンティング修飾による結合空間への蛍光分子の選択的導入について検討を行った。タンパク質インプリントポリマーに低濃度の標的タンパク質溶液を加え高親和性の結合空間をタンパク質で保護し、親水性キャッピング剤を反応させて低親和性結合空間を無効化した後、高親和性結合空間のみを蛍光標識した。タンパク質結合情報を蛍光変化に変換する能力検証したとこ、非処理のものと比較して参照タンパク質に対する非特異的蛍光シグナルが抑制されることが明らかとなった。
|