研究課題/領域番号 |
24651266
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮下 英明 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (50323746)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 天狗の麦飯 / 微生物群集構造 / 生態変化 / 微生物保全 / 土壌微生物 |
研究概要 |
平成24年度は,高橋基生博士(1935)によって報告された産地⑥~⑧,川村多実二博士(1934)によって報告された産地Fの特定と現存状況について調査した。また,川村博士によって報告された産地Mの微生物塊を採取し,微生物群集構造解析を行い,別の産地の知見と比較した。産地⑥および産地⑦については現存が確認できた。産地⑥では,ササや灌木等による被覆がなく「天狗の麦飯」が露出し,深さ8cm程度まで確認できた。産地の周囲に繁茂するササの根元にも「天狗の麦飯」様の塊が確認できた。このような微生物塊は初めての観察であり,成因解析に新たな知見を与えるものと期待される。一方でこの産地には,スコップによる大きな盗掘跡が3箇所みられ復元していなかった。この産地がかつてメディアに出たことが影響していることも考えられる。保全方法がわからない現状では,無闇な産地情報公開が破壊や消滅をもたらす可能性があることを示している。産地⑦はササに被われており目視による産地の特定はできないものの,コア採取により表層~10cm程度に「天狗の麦飯」様の塊が観察できた。産地の範囲ならびに深度,微生物塊の群集構造については今後詳細に調査する予定である。産地⑧ならびに産地Fについては,産地の特定ができなかった。これらについては,ササ等の被覆によって発見できなくなってしまった可能性と消滅してしまった可能性が考えられるため,さらに情報を収集し産地の特定と現存確認に努める予定である。産地Mの「天狗の麦飯」の微生物群集構造を調べたところ,嫌気性細菌によって形成される微生物塊であることがわかった。この結果は,これまで産地Kや産地Yから得られている知見とは全く異なっていた。このことから,「天狗の麦飯」と総称される土壌様微生物塊が必ずしも類似の微生物で構成されているわけではないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
野外調査によりこれまで再発見できていなかった2産地を特定し,その現存状況を明らかにすることができた。また,微生物群集構造の解析により「天狗の麦飯」と総称される土壌様微生物塊が必ずしも類似の微生物で構成されているわけではないことが明らかになったことは,予想外の展開であり,本研究の更なる展開を期待させるものである。
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今後の研究の推進方策 |
1)本年度も昨年度に引き続き,古文書等や文献等を基に「天狗の麦飯」産地の再発見と現存状況の有無について調べる。また,現存の確認された産地においては,許可を得て微生物塊の採取をおこなう。 2)平成24年度に再発見した2産地の微生物塊,平成25年度に再発見できた産地の微生物塊,消滅産地の土壌等の群集構造の解析を行い,天狗の麦飯の微生物学的定義に関する情報の蓄積をおこなうとともに,消滅後の微生物群集組成について明らかにする。 3)消滅産地の植生調査をおこない土壌環境の推定し,消失因子について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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